サブスク(定額制)を中心とする有料サービスでは、「Amazon Prime Video(アマゾンプライムビデオ)」や「Netflix(ネットフリックス)」「Disney+(ディズニープラス)」が膨大な会員を集めている。

いずれも、豊富な資金力をバックにする“黒船組”だ。

苦戦を強いられる国内勢だが、“黒船組”に立ち向かうためには、合従連衡やサービスの統廃合による立て直しは不可避で、悠長に構えているわけにはいかず、年明けとともににわかに動き出したと言える。

LINEと経営統合してもGYAO!は儲からない…

そんな中で、正念場に立たされているのがGYAO!を傘下に持つZHDだ。

「ヤフー」を源流にした持ち株会社として、19年10月の設立から3年半。21年3月には国内最大のSNS利用者をもつLINEと経営統合したが、2年も経たないうちに、傘下のヤフーおよびLINEと23年度中に合併すると発表した。

LINEと経営統合したものの、のっけからLINEの利用者情報が中国企業に閲覧される状態だったデータ管理不備問題が発覚し、つまずいた。このため、利用者の信頼回復に精力を奪われ、当初見込まれた相乗効果を十分に発揮できず、目立った成果を上げられずにいた。

当初の狙いだったヤフーとLINEの利用者IDの連携による顧客基盤の拡大はままならず、スマートフォン決済サービスの「PayPay」と「LINE Pay」のような重複するサービスの整理もほとんど手がついていない。

親会社のソフトバンクが、主力事業の携帯電話料金の大幅値下げで収益力が低下する中、ZHDが手がける非通信部門の拡大が期待されていただけに、ZHDの不振は痛手だった。

ZHDにとって目算が狂ったのは、収益面で主力のネット広告が大きく落ち込んだことだ。22年10~12月期の広告事業の売上高は前年同期比で1.2%のマイナスに転落してしまった。13.2%増だった前年同期に比べると、激減ぶりがわかる。

YouTubeと同い年の老舗プラットフォーム

ネット広告の中で、とくに伸びているのは動画広告で、サイバーエージェントなどの調べによると、22年の市場規模は5601億円と、前年に比べ33%も増えた。このうち、スマホ向けが4621億円と8割超を占め、TikTokなどショート動画向けの広告需要が旺盛だったという。

ところが、動画事業の中核だったGYAO!の撤退に象徴されるように、ZHDの動画系サービスは低迷。増大する動画広告の需要を受け切れなかったようだ。

GYAO!の歴史は古い。

創業は05年。有線で音楽配信を手がける「USEN(現USEN-NEXT HOLDINGS)が設立した「GyaO(ギャオ)」に始まる。「完全無料パソコンテレビ」がキャッチフレーズだった。

ちなみに、世界の動画ビジネスを牽引するYouTubeがサービスを始めたのも、同じ05年。世界最大の映像配信事業者であるネットフリックスのスタートは2年後の07年だ。