暴力的なストーカーの割合は25~35%

被害者統計を見ると、より実態に近い数が把握できる。内閣府の2021年「男女間における暴力に関する調査」では、「特定の相手からの執拗しつようなつきまとい等の被害」に遭った人は、全体の7.5%、女性に限定すると10.7%にも及んだという。

このように、非常に多くの人が何らかのストーカー被害に遭っていることは、けっして看過できない事態であり、早急に効果的な対策が必要である。

その一方で、不幸にして殺害にまで至るケースは非常にまれで、年間1件程度である。また、傷害、暴行、強制性交などの重大な事態にまで発展するのは、およそ300件程度である。

海外の研究を見ると、大多数のストーカー行為は、2週間以内で収束することがわかっている。しかし、それを超えても収まらないときは、数カ月以上の長期間に及ぶことがある。そして、暴力的なストーカーは、全体の25~35%で程度であることが示されている。

暴力的なストーカーのリスクファクター

したがって、ここで問うべき重要な問いは、数多くのストーカー事案のうち、暴力を伴う深刻な事案に発展するのは、どのようなケースなのかということである。

こうした問いに答えるべく、これまで複数の疫学的研究が行われており、それによって危険な暴力的ストーカーのリスクファクター(危険因子)が明らかになっている。その結果、見出された重要なリスクファクターは以下の通りである。

【図表】博多駅前殺人事件の被告と暴力的ストーカーの危険因子
※加害者の項目は報道などから、筆者が記入

博多の事件の容疑者については、冒頭で述べたとおり、精神鑑定もなされておらず、報道された範囲でしか本人のことはわからないが、これらのリスクファクターのほとんどすべてが当てはまることが推測できる(図表2の右欄)。