結婚相談所を経て結婚

それから十数年経った2020年5月。鈴木さんは33歳の時に、5歳年上の教員の男性と結婚。出会いは2020年になってから入会した結婚相談所だった。

「結婚相談所には、正直ネガティブな印象しかありませんでした。でも、利用して良かったなと思います。間に入ってお世話してくれる人もいるし、お互い高いお金を払っているので、安易な気持ちで活動している人も少ない。最初から『結婚前提』というのも話が早い。それに何より『安全・安心』、これに尽きます」

厳格な父方の祖母から、「婿養子以外は認めない」と言われていたため、祖母が存命中は、結婚したくてもしがたい状況だったのだ。

「祖母が他界した頃には私も30歳を超えており、20代の頃のような出会いもなく、年齢的にも両親を早く安心させたいことから、結婚相談所に入会しました」

コロナ禍ということもあり、東北地方在住の夫の両親とはオンラインであいさつをし、中部地方在住の鈴木さんの両親とは、滞在時間30分のスピードあいさつを行い、入籍後、8月にはフォトウエディングを実施、12月にマイホームを購入した。

プライドの高い夫

順調に話がまとまっていった様子から、幸せな結婚生活を想像するが、鈴木さんによると、最初はそうとは言えなかったという。

約20年間ひとり暮らしをしてきた夫は、独自の価値観やルールを持っていた。共働きであるにもかかわらず、家事のほとんどは鈴木さんが担当。それだけでなく、夫の帰宅後に、鈴木さんが「お帰りなさい」とは言ったのに、「ご苦労様」の一言がないだけで、怒って部屋に引きこもった。

気に入らないことがあるとすぐに不機嫌になり、鈴木さんが準備した夕食にも手をつけず、話し合いをすることから逃げ、けんかになると大きな声で怒鳴ったり、物に当たったりするため、鈴木さんは恐怖を感じることもあった。

「結婚当初はささいなことでけんかが絶えず、家に帰るのも苦痛なほどでした。私は結婚してすぐ妊娠したにもかかわらず流産してしまったのですが、初めての妊娠、そして流産は、とてもつらく悲しいものがありました。しかし、当時の夫は思いやりに欠ける面があり、妊娠初期の時点で職場に妊娠を言いふらし、その後、流産手術の付き添いを依頼しても、『俺仕事だよ⁉』と休んではくれようとはせず、私の気持ちに寄り添ってくれないだけでなく、プライドが高く、私から意見されることを嫌っていました」

想像とはかけ離れた結婚生活を支えてくれたのが、母親(69歳)だった。母親は、どんなに遅い時間でも鈴木さんの気持ちに寄り添い、「つらいことがあったら何でも話しなさい。いつでも電話をして気持ちを吐き出しなさい」と言ってくれた。その一方で、鈴木さんが夫とけんかをして実家に帰って来ようとすると、なぜか「帰ってきちゃダメ‼ どうしても帰りたいのであれば、掃除洗濯、2日分の食事の支度も完璧にして、部屋にこもって寝ている夫を起こして、許可を得てから帰って来なさい!」と言った。

床に置かれた受話器
写真=iStock.com/Asobinin
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鈴木さんはその通りにした。部屋にこもって寝ている夫を起こし、「実家に帰るので、承諾してください!」と頭を下げた。すると夫は慌てて飛び起き、「それは違うだろ!」と怒る。それでも鈴木さんが、「母に話した結果、夫の承諾がないと実家に帰って来るなと言われたから、お願いだから帰る許可をください!」と必死に訴えると、夫は感じるところがあったのだろう。このとき以降、夫は少しずつ変化していく。自分に配慮してくれた鈴木さんの母親へ感謝の気持ちを持つようになり、話し合いから逃げず、衝突する度に夫婦間で話し合う習慣がついた。

「夫が『変わろう』と思って努力をしてくれたのがこちらにも伝わり、今では自慢できる良き夫、お互いを思いやれる仲良し夫婦になりました」