平時に稼げる事業の幅を広げておいた成果

とはいえ、2021年度の鉄道事業はまだ赤字である。ただし、83億円の赤字で他のJR旅客各社に比べればかなり抑えられている。駅ビルなどの流通業でも赤字だが、ショッピングモールのアスティなどを手掛ける不動産業の営業利益が149億円まで回復したことで黒字化となっている。

ドル箱路線を徹底的に効率化して運行し利益率を高め、関連事業で収益先の幅を広げておいて有事に備える。鉄道会社として理想の経営のひとつといえるが、2021年度のJR東海はそれを実現して、営業利益を出したといえる。

しかし、その理想の鉄道経営も、日本最大の収益を誇る東海道新幹線を擁しているゆえに可能となることだ。営業する地域の特性に左右される鉄道会社が一様に目指せるものではない。

JR西日本の「復帰」がやや出遅れた理由

JR西日本は、2019年度から2020年度にかけて売上が40.5%減となった。

この下げ幅はJR東日本と同規模である。また、2021年度の売上は1兆311億円で14.8%増となり、増加率はJR東日本より若干高い。また、関連事業の売上の推移が本州のJR3社のなかで最も安定している。

しかし、利益で差が出た。営業損失額の比率が3社のなかで最も大きい。先述したように、JR西日本の2018年度の営業利益率は12.9%で、かなりの高収益の部類に入る。2021年度はJR東日本の営業損失の額は売上の7.8%にあたる。一方、JR西日本は11.5%。1兆311億円の売上を上げて1190億円の赤字となった。

鉄道収益は5441億円に増えたが、営業損失は1443億円と会社全体の赤字額より多い。収益に対する営業損失の比率は26.5%。不動産業が300億円の利益を出しており、鉄道の赤字を補てんするかたちとなっている。

JR東日本の鉄道事業の収益は1兆2770億円で、営業損失は2853億円。営業損失の比率は22%。営業利益率は“1%”をめぐってしのぎをけずるもので、数%といえど、その差は大きい。

JR西日本は鉄道事業の収益の減少により、売上全体に占める関連事業の比率が高くなってきており、全方位で利益率を高めていかなければ、JR東日本、JR東海に後れをとっていくことになる。