岡山県の長寿を支える、名知事の遺産

岡山県の長寿は、名知事として知られた三木行治(1951~64年在任)の遺産と言うことができる。三木は旧制六高から岡山医科大学(現岡山大学医学部)を卒業して医者になった。岡山医大は旧帝国大学と同列に扱われていた名門である。

そののち、簡易保険健康相談所で働く一方、九州帝国大学法文学部で学び、さらに、医学博士号もとった。この異才の名声は東京の厚生省にまで届き、1939年には医系技官となり、厚生省公衆保健局長、ついで公衆衛生局長に就任し、海外の視察にも出かけた。

知事になった三木は、「行政の科学化」を標榜ひょうぼうし、「産業と教育と衛生の岡山県」をスローガンに掲げた。経済開発では倉敷市の水島に理想的なコンビナートを造成し、国体を梃子てこにインフラ整備にも成功したが、癌実態調査、アイバンクの設立、精神障害児施設の開設など医療福祉面で最先進県との評価を得て、これもマグサイサイ賞を受賞した。

短命県の共通点は「アルコール消費が多い」

平均寿命ランキングで下位の県について考察すると、1965年と2020年いずれも東北勢が目立つ。所得の低さに問題があるのかといえば、青森、福島、秋田、岩手、茨城の一人当たり県民所得(2019年度)は、全国43位、28位、39位、35位、10位であまり相関性は高くない。

雪国が良くないのかといえば、男性の平均寿命では石川が6位、福井が7位だから関係なさそうだ。一方、さきほど紹介した「家計調査」(2020~2022年平均)で見ると、酒類の消費額は青森が1位、福島が7位、秋田が5位、岩手が6位で、過度の飲酒が健康に悪いことを如実に表している。

また、魚介類の消費額は青森2位、福島19位、秋田4位、岩手17位、納豆では青森が9位、福島が1位、秋田が6位、岩手が2位である。牛肉では青森が41位、福島が48位、秋田が42位、岩手が52位だ。魚介類や納豆をよく食べ、牛肉は控えめな県が平均寿命では下位にあるのは、健康食志向の人にとっては都合の悪い事実である。