「食事の洋食化」と長寿の意外な相関性

食生活について言えば、消費額ベースで肉類2位、牛肉3位、卵5位、コーヒー1位、パン4位、マーガリン7位など、かなり徹底的に洋風化された食生活である(*2)。この傾向は、同じく平均寿命で男女総合4位の京都と5位の奈良も共通で、食事の洋風化が長寿の決め手といってもおかしくないほど相関性がある。

(*2)総務省統計局「家計調査」(2020~2022年平均)による。47都道府県庁所在地と、北九州市、堺市、浜松市、相模原市、川崎市の52都市についてのものである。都道府県庁所在地の数字で代表させている。

和食が健康的だとか発酵食品や大豆製品を摂ると長寿になると言われるのは、西洋人が現状よりそちらに傾いたほうがいいということであって、日本人はむしろ逆なのではないか。こんなところで、国粋主義のような考え方をもちだすのはよろしくない。

滋賀県が長寿であるもうひとつの要因は、医療体制だ。京都の大学出身の医師にとって、近隣なので医局からの派遣先として歓迎される傾向があるほか、1974年の武村正義県政誕生時に医系技官トップの鎌田昭二郎ら京都大学医学部系の勢力が擁立の中心にあったことから、彼らの県政への発言力が強く、それが医療体制の充実に有利に働いたとも言える。

ハムと卵とパン
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「塩分摂り過ぎ」改善を進める長野県

長野県も、地域医療体制に成功したと言われる県だ。もともと、全国有数の塩分摂取量が多い地域で、冬の寒さも厳しく、脳卒中による死者が多かった。そこへ現在のJA長野厚生連・佐久総合病院にやってきたのが、若月俊一医師(故人)である。

治安維持法で逮捕・拘禁されたりして東京を離れ、1945年3月に長野へ赴任したのだという。そして、診察だけでなく、農民の生活に入り込んで管理をしなければならないと考えたのである。

無医村への出張診療、「予防は治療に勝る」と自ら脚本を書いた演劇などによる啓発、衛生活動の推進、健康診断のモデルとなった八千穂村での全村一斉健診などを行い、アジア全体での農村医療のモデルとなったとして「アジアのノーベル賞」と呼ばれるマグサイサイ賞を受賞した。

また、1959年には、同じく佐久市の国保浅間総合病院に吉澤國雄院長が赴任し、「脳卒中になる理由は塩分の摂り過ぎである」と啓蒙けいもう活動を行った。それが1980年からは、県全体の「県民減塩運動」となり、1日の塩分摂取量が15.9gだったのが、1983年には11gにまで減ったという。