肩書はまじめに考えすぎたらいけない

ニックネームの次は「肩書き」。いよいよここからが名刺づくりの本番です。

ほとんどの人にとって「肩書き」は組織から与えられるものであり、「肩書きを自分で考える」ことなど経験したことがないはず。だからこそ意味があります。

名刺交換の日本人
写真=iStock.com/mapo
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自分で自分の肩書きを考える──これは本当の意味で「フリーランスへの第一歩」といえる行為です。

だからといって真面目に考えすぎてはいけません。真面目さでは大企業とAI(人工知能)にかないません。自分自身で勝負するフリーランスはユニークな視点とユーモアで勝負しましょう。

この「肩書き」について思い出深いエピソードをご紹介します。

ずいぶん前ですが、事務所のスタッフの名刺を新調したときのこと。デザインもプロにお願いしてカッコ良く一新しました。肩書きについては「各自、自分で考えるように」と宿題を出しました。組織の序列などに関係なく、「自分の個性を表す肩書きをつくるように」と命じたのです。

いまだに忘れられない20年前に見た肩書

「自分の肩書きを考えなさい」という突拍子もない指示でしたが、数日経ったところで、第一弾が若い女性スタッフから出てきました。

興味津々でメールを開けたところ、彼女が自分に付けた肩書きはなんと「エンジェル」。

私もさすがにビックリしました。「エンジェルかよ」

本人に話を聞けば、自分には特別な専門性など何もないが、みんなの心を和ませる存在でありたい。だから目標を含めて「エンジェル」なのだと。

もちろん即決で採用です。これぞ私の望んでいた肩書き。そして彼女の名刺には「エンジェル」の肩書きが記されました。

出来上がった名刺を彼女が差し出すと、それを渡された人は全員が「えっ、エンジェル!?」と驚きます。すぐさま「なぜエンジェルなのか」の会話が始まります。良い意味で違和感タップリ、笑顔の会話が始まるわけです。

あれから20年近く経ちますが、彼女の本名は覚えていなくても、あの肩書きのことは誰一人忘れません。「エンジェルさん、お元気ですか?」と今でも聞かれます。

このエピソードのポイントは、本人が「エンジェル」という肩書きが似合う女性だったこと。彼女は笑顔が似合う、やさしくて周りも笑顔にできる女性でした。

皆さんも彼女を見習って、ユニークかつユーモアに満ちた、そして自分に似合う肩書きを考えてください。

語感の良いニックネームと自らを表す肩書き。この2つが決まればそれだけで自分の名刺は価値があります。サラリーマン時代から定年後フリーランスまで持ち運べる、長期的にポータブルな名刺。これぞサステナブル!