<2022年7~9月期の法人企業統計で、全産業の経常利益が過去最高額を記録。実感はわきにくいが、本当に儲かっているのか?:加谷珪一>
お札とチャート
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日本企業の経常利益が同じ四半期としては過去最高を記録するなど、企業業績が拡大と報じられている。一部の論者は円安の効果であり、日本経済が順調に回復している証左だと主張しているが、多くの国民にとって円安で企業が儲かっているという実感はない。生活に根差した直感は大抵の場合正しく、肌感覚と異なる情報に接した場合には、数字のマジックを疑ったほうがよい。

財務省は2022年12月1日、7~9月期の法人企業統計を発表した。全産業(金融.保険業を除く)の経常利益は前年同期比18.3%増の19兆8098億円だった。これは7~9月期としては、比較可能な1954年以降、過去最高額である。

円安の進展によって一部の企業が空前の利益を上げているのは間違いない。だが、多くはインフレや円安の影響によってコスト増加に悩まされており、簡単には価格に転嫁できないことから、利益を犠牲にせざるを得ない。では、こうした状況にもかかわらず、なぜ企業全体の業績は過去最高を更新しているのだろうか。その疑問を解くカギはインフレにある。

日本経済は長くデフレが続いてきたが、今年に入って円安が進み、輸入物価が上昇したことで、日本でもいよいよ本格的なインフレが始まった。コスト上昇分をどれだけ価格転嫁できるのかは業種や業態によって異なるものの、経済全体の物価が上昇すれば、総じて企業の売上高や利益の「絶対額」は増加する。だが、この状態ではコストも増えているので、決して儲かっているわけではない。

重要なのは利益率の変化

例えば年間1億円を売り上げ、2000万円の営業利益を得ている企業があったとすると、コストは8000万円と計算される。インフレによって全体の物価が2割上昇した場合、当該企業の売上高は1億2000万円になる。

一方、コストも2割増えているはずなので、物価上昇後のコストは9600万円となり、コストを差し引いた利益は2400万円になる。売上高と利益は増えているので増収増益と表現されかもしれないが、利益率はどちらも20%であり、実態としては何も変わっていない。

つまり物価上昇が起こっているときに、企業が過去最高益を更新するのは当たり前であり、利益率の変化を見なければ、本当に企業が儲かっているのかは分からないのだ。