海外から個人輸入した治療薬による健康被害が後を絶たない。なぜリスクの高い未承認薬に手を出してしまうのか。医師の大脇幸志郎さんは「個人輸入を代行する怪しい通販サイトでは、ED治療薬ややせ薬が人気だ。結局、クスリを問題の解決手段だと捉えているから、リスクが目に入らなくなる。『クスリでなんとかしよう』という考えは間違っている」という――。

調査の結果4割が偽造品だった

勃起不全(ED)の治療薬として有名な「バイアグラ(一般名シルデナフィル)」や「レビトラ(一般名バルデナフィル)」、「シアリス(一般名タダラフィル)」は、病院で診察を受け、必要と判断されれば処方してもらえます。

一方、ネットで検索すると、バイアグラなどを売る怪しい通販サイトがいくつもヒットします。

バイアグラなどを売る怪しい通販サイトがいくつもヒット(※写真はイメージです)
写真=iStock.com/clubfoto
バイアグラなどを売る怪しい通販サイトがいくつもヒット(※写真はイメージです)

ネットで販売されるクスリには偽造品も多く、全国紙でニュースになったこともあります(市販薬は別とします。以下同様)。

ファイザー日本法人や日本新薬などED治療薬を扱う4社が、2016年の3月から8月にかけて、ネットで売られている「バイアグラ」などのクスリを入手して成分を調べました。すると、そのうちの40%が偽造品でした。

中には有効成分が全く含まれていないケースや、正規品に含まれていない物質が入った錠剤もあったそうです。

個人輸入は副作用被害が救済されない

こうした事実がある一方、ネット上には偽造品の見分けかたを教えるサイトも存在しており、「こっそりクスリを手に入れる裏技」への関心は高いようです。

そうした裏技の代表が個人輸入です。国内では買えないクスリでも、個人が外国から輸入することは一定の範囲内であれば許容されています。

これは、厚生労働省によると「外国で受けた薬物治療を継続する必要がある場合や、海外からの旅行者が常備薬として携行する場合」を想定したものです。

この仕組みを利用して、通常は医師の処方が必要なバイアグラなどを、脱法的に手に入れるのが個人輸入です。

そのため、国内での薬剤流通にかかる厳格な規制と品質管理、医薬品副作用被害救済制度などが適用されません。