「稼げる体質」への移行に成功

危機に直面したアクサスが幸運だったのは、行政処分に先立ち、理念とビジョンに基づく経営に踏み切っていたことである。そのためであろう、実際には行政処分後も、危惧されていたような退職者の増加は生じなかった。大多数のスタッフがアクサスに残り、事業の再建に経営陣とともに取り組むことを選んだのである。

会議で、資料を指さす手元
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アクサスの売り上げについては、さすがに一時は3分の2ほどにまで縮小した。しかしこれも2年ほどで反転を果たしており、アクサスの事業は再び成長軌道を取り戻している。

そして重要なのは、この間にアクサスがビジネスモデルを転換し、収益性を向上させたことであろう。現時点では売り上げはかつてのピークにまでは戻っていないものの、利益についてはすでに過去最高を更新している。

アクサスが、このより稼げる体質への移行を果たすことができたのは、SESをやめて、労働者派遣事業に切り替えたからである。アクサスの社内では行政処分の以前から、SESはアクサスの理念やビジョンにかなう事業なのかについての議論がなされていた。しかし当時のアクサスにとっては、SESは自社の事業の稼ぎ頭であり、その停止は軽々には決断できなかった。さらにいえば、労働者派遣事業はSESに比べて難易度が高い。

しかし労働者派遣事業のもとで十分な人材を確保しつつ、需要の変動への柔軟な対応を実現するオペレーションを実現できれば、法令遵守だけではなく、中間マージンの削減などから収益性は確実に向上する。

このようなトレードオフを前に悶々もんもんとしていたアクサスの背中を、行政処分が押すことになった。危機はこのようにしてアクサスに、新たな機会をもたらしたのである。