日本で広がる「転職を前提にした就活活動」

日本的雇用慣行には限界が近づいています。

これまでのように1つの企業や職業で生涯を全うする前提は、崩れつつあります。厚生労働省が若年労働者の雇用状況や就業に関する意識などを調査するために、5年おきに実施している「若年者雇用実態調査(平成30年)」によると、初めて勤務した会社で現在も働いている若年労働者(15~34歳)は全体で50.9%と、半分近い労働者が離職を経験していることがわかります。

宮本弘曉『51のデータが明かす日本経済の構造』(PHP新書)
宮本弘曉『51のデータが明かす日本経済の構造』(PHP新書)

また、最終学歴別に初めて勤務した会社に現在も勤めている労働者の割合をみると、学歴が高くなるほどその割合は高くなっています。しかしながら、大卒でも36.7%の労働者が初めて勤務した会社には現在勤めていません。

学生の就業観にも変化が起こっています。日本経済新聞社が2021年に就職活動を控える学生を対象に実施したアンケート調査によると、約4割の学生が転職を前提として就職活動を行うと回答しています。同調査では、転職までの期間はどれくらいを考えているかも聞いていますが、「3年以内」と答えた人は12%、「5年以内」までに拡大するとその割合は34%に達します。

今や「いい会社に就職できれば一生安泰」という時代ではなく、新卒採用に応募する際に数年後のキャリアアップを考えて、最初の一社を選んでいる若者が多いということです。ひとつの会社に依存することは危険だと感じている若者が増えているとも言えるでしょう。

日本の雇用慣行が変わり始めている

また、雇用形態の多様化も進んでいます。日本的雇用慣行では専業主婦付き男性正社員が標準的な労働者でしたが、今や就業者の4割が非正社員であり、就業者の5割が女性や高齢者となっています。

こうしたなか、企業側も日本的雇用慣行を見直し始めています。2019年には経団連は、今後、企業が終身雇用を続けていくことは難しく、雇用のあり方を見直す方針を示しました。また、日本的雇用慣行を実践する企業の代表格とされてきたトヨタ自動車は2021年から定期昇給について、一律的な昇給をなくし、個人の評価で判断する制度を導入するなど、年功賃金制度を見直しています。

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