10ドルだった朝食がいまでは20ドルに

私が住む米国の物価上昇は日本より深刻である。私は車の運転をやめたので、普段は散歩以外にほとんど出歩くことがなく、買い物は妻がするので、物価上昇を体験する機会は少ない。それでもかつては10ドルで食べられたような簡単な朝食が20ドルを超えていたりするので、インフレを実感する。

スーパーで商品を選ぶ女性
写真=iStock.com/aogreatkim
※写真はイメージです

一方で、いま日本に旅行する米国人は、円安の恩恵を最大限に楽しめる。日本の物価も食料品を中心に値上がりし始めているが、米国に比べれば気にならない程度だ。

ここまでの物価上昇に至った原因の第1はコロナ禍にある。通常、物価は需要と供給の曲線が交わったところで決まる。しかし、コロナ禍は両曲線の間に縦方向にくさびを打ち込んだ。需要はあったし(例・人々はレストランで食事をしたい)、供給も問題なかった(例・人手も材料も十分にあった)が、公衆衛生上のロックダウンが両者のマッチングを許さなかった。需要と供給が出合って交易するのが不可能だったり、コストがかかったり(それが楔の長さ)するので取引量が減少するのである。