あらゆる依存症は自然治癒しない

そしてもう1つ大事な事実があります。それは「あらゆる依存症は自然治癒しない」のです。タバコでさえ禁煙外来での治療が常識になりつつある時代、スマホ依存にも対策が必要です。

ここでは各種依存症の治療法が、スマホ依存から脱却するためのヒントになります。「自助グループ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。同じ悩みを抱えた人たちが同じ場所に集まり、自らの体験を語り合いながら依存症を乗り越えることを目的とした集まりです。「酒さえ飲めればあとは何もいらない」「ギャンブルのために人に嘘をついてまで金を借りた」──。そのようなネットでも明かせない「ダメな自分」をさらけ出し、他人と経験をシェアしていきます。そうすることで、かけがえのない仲間ができるのです。

依存症は「孤立の病」ともいわれます。お酒にしても、歯止めをかけてくれる誰かと飲んでいるうちは依存症になるリスクは低い。しかし孤立していると、酔いつぶれるまで飲んでしまう。やめたくてもやめられない不安を相談できる相手もなく、現実逃避のためにまた飲むことになります。

何かに依存すること自体が悪いわけではありません。現に、私もあなたもさまざまなものに頼って、支えられながら生きています。問題は、依存する対象です。自助グループに関わる人は、「モノや行為への依存から、人への依存に移行することが大切だ」と言います。要は、頼れる仲間がいる人は、依存症に陥るリスクが低いということです。

スマホ依存を克服するため、自助グループに参加している人もいます。自助グループまでいかなくても、本音を語り合い1対1の関係を深められる仲間をつくれるなら、それで十分です。新型コロナの感染リスクが気になる人も、たまにはリアルで人と会い、普段は胸のうちにおさめている不満をこぼしてみてはどうでしょう。

SNS上でも、明るい自分ばかりでなく、ダメな自分を思い切ってさらけ出してみてもいいかもしれません。シゾフレ型の「広く浅く」の人間関係に慣れていると「そんなことして嫌われたらどうしよう」と心配になるでしょうが、案外「実は私も同じ」と言い合える仲間が見つかることもあります。ネットの世界とは本来、多種多様な出会いに溢れた場所であったことを、ぜひ思い出してください。

その一方で、スマホ関連のビジネスをしている企業にも対応を求めたいところです。これほど依存性が高いスマホを野放図に広めておいて、「スマホ依存は持ち主の責任」という主張は通用しません。販売する際にも広告規制や危険性の警告が必要ではないでしょうか。