AFLO=写真
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リビア最高指導者 Muammar al-Gaddafi(ムアンマル・アル・カダフィ)
1942年、リビア生まれ。69年の革命以来、世界最長といわれる、40年以上にわたって事実上の元首を務める。アフリカ連合の議長も務めた。中東動乱が飛び火、退陣を迫られる。


 

かつての英雄は、「砂漠の狂犬」と恐れられる独裁者となり、国民の抗議デモに血の弾圧を行う、殺戮者に成り下がった。テレビカメラの前で支離滅裂な長演説をぶつ蓬髪の下のよどんだ目に、41年前に国を憂えた砂漠の民の面影はみじんもない。

1969年、トリポリで同志の将校たちとともにイスラム社会主義革命を決行し、石油利権にまみれ貧しい社会を顧みなかった国王イドリス1世を退位させた。革命評議会議長となり大佐に昇進。当時は米石油メジャー・オクシデンタルと渡り合い、リビア協定に調印させ、石油の支配力をメジャーから奪い返した。そのオイルマネーで反イスラエル過激派を支援。

一方、オイルマネーにおぼれ、救いがたいドラ息子たちにその富と権力を委譲しようとしていた。2008年に五男がスイスで犯した婦女暴行事件で逆切れし、スイスに報復措置をとった事件をみれば、すでに独裁者の末期症状を示している。

外遊先では大使館の庭に張った遊牧民のテントに宿泊するのが倣いだった。石油がなければ、彼は砂漠に生きる質素なベドウィンの一族長にすぎなかった。だがそこに感傷を催させるほど、その凶行の数々は甘くはない。2月28日の欧米メディアのインタビューに「国民は私を愛し、私のために死ぬ」と息巻いたが、軍の離反が続き、世界最長の独裁政権の終焉は時間の問題となった。すでにポスト・カダフィに向けて反体制派と欧米の策動が始まっている。シャルガム国連大使は2月25日の国連安保理事会で「兄弟カダフィよ、一人去ってくれ」と涙ながらに訴えた。高校以来の友人が突き付ける「最後通牒」に答えるだけの誇りが老醜の革命家に残っているのだろうか。