若者が増えない悪循環

若者が選挙に行かないのは、「現状にそれほど不満がない」「選挙に行っても、何か変わるとは思えない」などの理由があると考えられるが、身近に自分たちの話を聞いてくれる政治家がいないことも大きいだろう。話をしたいと思える若手の政治家がいないから政治が身近に感じられず、政治に自分の声が届いて困りごとが解決したという経験もないために政治に期待が持てない。だから選挙にも行かない。すると余計に若手の政治家が増えなくなる。

その悪循環を断ち切るためには、NYNJのような若者の投票率を上げる活動と、FIFTYS PROJECTのような若手の候補者を増やす取り組みの、両方が必要だ。能條さんらは、若者の投票率が低迷している背景を詳しく知るため、意識調査を行って分析を進めており、近くその結果を公表する予定だ。

「ジェンダー平等にコミットする若手候補者」を募る

能條さんたちは、アメリカのEMILY’s List(エミリーズリスト)のように、FIFTYS PROJECTが応援する候補者のリストを選挙前に公表し、その候補者を支援するスタッフのボランティアを募るといった活動も考えているという。

エミリーズリストとは、妊娠中絶の選択権を尊重するアメリカの民主党派女性候補を支援するため、1985年に作られたアメリカの政治資金団体だ。組織名は「Early Money Is Like Yeast(早期の資金は、イースト菌のように大きな成果をもたらす)」の頭文字からきている。イースト菌がパンを膨らませるように、資金が候補者の選挙を成功に導くという考え方を表現している。

FIFTYS PROJECTはまず、立候補に関心をもつ20~30代の女性や、性自認が男女どちらにも当てはまらないXジェンダー、ノンバイナリーといった人々を募る予定だ。そして、選挙に関する相談会や勉強会の開催、政策の助言、SNSを活用した情報公開や、未来の立候補者を増やすためのコミュニティづくりなどを進めていくという。趣旨に賛同する人であれば所属政党は問わない。

「基本的には、『ジェンダー平等にコミットする人たち』を後押ししていきます。自分が住む自治体でいい人が立候補していても、そのことを知らず、応援しないままで終わってしまう人も多い。FIFTYS PROJECTが、そのきっかけになればと思っています」

政党に頼らなくても議員になれる選択肢を

政党の公認を取るのは至難の業で、地方議員の8割は無所属だ。しかし、無所属で出馬するとなると、選挙の資金はすべて自分で用意しなければならないし、政策立案も自分1人で担うのは大変だ。

「それらの支援ができるようになりたいんです。政党に頼らなくても立候補して当選できるような方法の選択肢が、やはり必要なのではないかと思います」