EQの高い人が求められる時代に

ところで、人間の能力には知能指数の「IQ」と感情指数の「EQ」の2つがあるといわれている。

IQ(Intelligence Quotient)の高い人は知能が高いため、当然、学校のテストでは有利になる。これまでの日本企業でもIQの高い人材が重宝されてきた。

しかし、IQの高い人材が社会に出て成功するとは限らない。医学部試験に受かった人が必ず立派な医者になるわけではないし、有名大学の卒業者だけが会社に入って売り上げをあげたり、新製品を開発したり、リーダーシップを発揮できるというわけではない。

特に今は昔とは経済環境が激変しており、単に頭の良い人が成功する、あるいは性能の良い製品をつくりさえすれば売れるという時代は終わっている。

こうした時代の変化とともに、企業の求める人材も知能が高いだけの人材から、人間としての総合力が高い人材に変わってきている。つまり、EQ(Emotional Intelligence Quotient)の高い人である。

「人間力」が今こそ必要だ

EQとは感情の豊かさを表す能力のことで「心の知能指数」とも呼ばれているが、意欲や矜持きょうじを生み出す原動力になるものであり、まさに人間力といえるだろう。

一般にEQが高い人は行動や言葉によって人を感動させることができ、また共感能力にも優れている。困難な課題にぶつかったときにも、身体中からほとばしるような熱意で、最後までやり抜くことができる。

「このことなら他の誰にも負けたくない」「この分野では絶対に一番になる」という情熱や、自分は必ずやり遂げるという矜持、できるまでやるといった粘り強さなどもEQによるものだと私は考えている。大学卒業後、社会に出た後はこうした力を持った人が多く成功している。

今後、AI化が進めば、こうした人間力がより必要とされるようになるはずだ。

IQは伸ばしにくいが、EQは後天的に伸ばせる

覚えておいてほしいのは、「EQは努力や経験によって後天的に伸ばせる」ということである。

IQには遺伝的な要因が大きく影響しているため、努力しても簡単には上がらないという。一方、EQは遺伝などの先天的要素が少なく、経験や学習、努力によって上がっていく。いわば人間の筋肉のようなもので、鍛えれば鍛えるほど上がっていくのだ。