一番ほしいのは上司の「がんばろう」

小林剛史(仮名)26歳/薬品/技術支援・年収350万円

入社1年目は研究職として働いていました。農薬を生物に被験する部署で、研究に没頭する日々。農学部を出た私にとって、じっくり時間をかけられる環境はとても魅力的でした。

2年目になるとき、突然の異動を命じられます。「研究職を続けたい」と、当時の上司に4度かけあったものの受け入れられず、現在の部署へ移りました。

コミュニケーションの中心はEメール。外出は年に1回の出張のときだけ。人と話をする機会がめったにない今の私の職場では、働きがいを感じることはまったくありません。

年収にも、会社にも、特に不満があるわけではないんです。むしろ、うまく仕事ができない自分へのもどかしさや悔しさ、焦りがある。だからこそ、職場の人たちにも遠慮をしてしまい、なかなか話しかけられない。いま一番ほしいのは、上司からの「一緒にがんばろう」という一言です。

お客さんが喜ぶのが何より楽しみ

岡田英明(仮名)47歳/通信機器営業・年収900万円台

いまの会社に入って10年目です。お客さんは通信会社の開発担当で、携帯電話の新製品に関するリクエストを聞いて社内のエンジニアに伝える。1回でリクエストどおりの製品ができることはまずありませんが、完成品を見てお客さんが喜んでくれるのが何よりの楽しみです。情報処理の専門学校を出たので、最先端の開発現場を見られるのも嬉しい。

これまでに3回転職しました。誘われるままに職場を移っただけで、業界はずっと通信関係です。携帯をはじめ、技術の進歩に当事者としてかかわってきたことに、ときどき感慨を覚えます。

1つのミスで大勢のユーザーに影響が出るため、プレッシャーも大きい。だから、給料だけが目的ではやっていられません。自分の専門分野が広がったと感じる瞬間のほうが大事。お小遣い制で、給料が上がっても増額されないですし(笑)。

※すべて雑誌掲載当時

(荻野進介=構成 向井 渉=撮影 TABLE FOR TWO=画像提供)