アジアとヨーロッパで大きく異なる賃金のありかた

日本企業の報酬体系は、年齢が上がるほど賃金が上昇する「年功序列型」の仕組みになっている。これは、男子の一般労働者においてとくに顕著だ。図表6に見るように、賃金月額は、19歳未満の18万3000円から年齢とともに増加し、55〜59歳で42万円のピークになる。その後は下落し、70歳以上では26万1000円となる。これは、25〜29歳とほとんど同じ水準だ。

【図表6】日本の年齢階級別賃金(男性、一般労働者、2020年)
日本の年齢階級別賃金(男性、一般労働者、2020年) 出所=『どうすれば日本人の賃金は上がるのか

これに対してアメリカの場合には、図表7に示すように、30代半ば頃までは職務経験の蓄積を反映して賃金が上昇するが、30代後半から60代前半までは、ほとんど年齢に関係なくフラットになる。

【図表7】アメリカの年齢階級別賃金(男性、フルタイム労働者、2021年)
アメリカの年齢階級別賃金(男性、フルタイム労働者、2021年) 出所=『どうすれば日本人の賃金は上がるのか

なお、OECD, Connecting People with Jobs, Towards Better Social and Employment Security in KoreaのFigure1.18に、各国の年齢別賃金のデータが示されている。それによると、韓国も、日本と似た年功序列型だ。それに対して、ヨーロッパ諸国では、アメリカと同じように、30歳以降は、65歳以上まで含めて、ほとんど年齢に関係がないフラットな形になっている。

年功序列的な報酬体系は生産性の向上を妨げている

日本の報酬体系は、生産性の向上を妨げている面が大きい。第1の問題は、年功序列的な賃金は、労働の成果に応じる報酬になっていないことだ。図表6に見るように、55〜59歳の賃金は19歳未満の2.3倍であるが、単に年を重ねただけで、生産性がこれほど上がるとは考えられない。

むしろ、年をとることによって、時代の変化に対応できなくなる危険のほうが大きいだろう。それにもかかわらず日本の賃金体系で賃金が年齢とともに上昇するのは、年をとれば管理職の地位につくという、それだけの理由による場合が多いからだろう。そうした人たちが意思決定権限を持つことになるので、企業が新しい事業に取り組むことが阻害される。なぜなら、新しいものの導入は、年長者の地位を危うくするからだ。

本来であれば新しい技術体系に応じて新しいビジネスモデルを導入する必要があるのに、日本企業は古い技術体系にしがみつこうとする。そして、変化する技術体系に適切に対応することができない。ましてや、新しい変化を世界に先駆けて実現することなど、ほとんど不可能だ。

また、年功序列的な報酬体系は、能力や生産性に応じて賃金を支払うことを難しくしている。このため、若い人材が持つ専門知識が適切に評価されない。日本の企業の多くが新しい社会状況にうまく適応できない大きな原因が、ここにある。「デジタル化の遅れ」ということがいわれるが、それは、こうした傾向の一つの現れにすぎない。日本の報酬体系が、様々な変革を阻害していると考えざるを得ない。