「密接な関係にある他国」とはどこか

【木村】その場合の「グループ」について、橋下さんはどれぐらいのものを想像していますか。

【橋下】安倍さんが制定した平和安全法制の存立危機事態では、「密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生したとき」となっていますよね。すなわち日本と密接な関係にある国がグループになってしまう。

【木村】政府答弁によると、ほとんどの国が「密接な関係」になるようです。

【橋下】そうそう。これは非常にまずい。木村さんの心配のタネである法律によるラインがまったくわからない状態。他方、密接な関係を事前にルール化することも不可能です。ここで僕の憲法観なんですが、事前にルール化できないことは手続きや仕組みで解決するというものを生かします。

僕が維新の会の代表を務めていたときに練り上げた平和安全法制の対案には、「条約を締結した国」を集団的自衛権のグループにすることを明記していました。きちんと集団的自衛権を行使し合う関係を認めた条約を結んだ国を、グループ専守防衛のグループとすべきです。

意識していたのはオーストラリアとイギリス

【木村】日米安保を想定していたということですね。これから韓国とも結ぶかもしれないということですよね。

【橋下】特に意識していたのはオーストラリアでした。今オーストラリアとは、円滑化協定があり、いろいろと安全保障上の関係性が積み重なっているところです。さらにイギリスですね。グループ専守防衛論を考えるのであれば、きちっと条約化するべきです。

オーストラリアとイギリスの国旗
写真=iStock.com/MicroStockHub
※写真はイメージです

詭弁きべんと言われるかもしれませんが、日本一国専守防衛論からグループ専守防衛論にしておけば、グループが攻められたから反撃するということで説明がつくと思います。

グループで攻撃を受けた場合に反撃しているのだから、先制攻撃でもなんでもない。そうした理論の構築は、本来は政治家が主導しないといけなかったんだけど、日本の政治家たちは今までの政府答弁の積み重ねの上で無理して説明してきたから、憲法学者からするとやはりおかしく見える。

【木村】改憲すれば、そのような考えに基づいた制度設計もできそうですね。