年上に対して効果的な叱り方

では次に、自分よりも立場が上で、力を持つ人が相手の場合はどうでしょうか?

これは、それぞれの職場やまわりとの関係性によって、取るべき行動は変わります。もし、あなたがその職場でずっと働きたいと望んでいるなら、ただ上司に怒りをぶつけても立場が悪くなるだけです。

実は、わたしはかつて働いていた会社でたまたま若くして人事担当役員になり、ほかの役員や事業部長たちのほとんどが年上だったという経験があります。

すると、どうしても上から目線で無理難題をいってくる人もいました。

そんなことが続いていたある日、わたしは個室で向き合っていたある事業部長に対して、机を思い切りバーンと叩き、「いい加減にしろ!」といいました。

「こっちがどれだけあなたの部のことを考えて、苦労しているのかがわからないのか!」と。

その頃は禅もなにも知らず、わたしは未熟でした。だから、怒りをぶちまけてしまったわけです。

でも、いったん怒りをぶちまけると、その人は目を丸くして、「そ、そうはいってもさ……」と小さくなってしまったのです。

いま思えば、あれは意図せず、禅の「かつ」をしたのかもしれません。「喝」とは、相手の目を醒まさせるということです。

わたしはその人のことが嫌いではありませんでした。ただ、「なにをいってもダメだ」と思ったので怒ってしまったわけです。

繰り返しですが、わたしの未熟さゆえ、怒りの感情が必要だったということです。

でも、立場が上の人に対しては、ときに毅然きぜんとした態度を取ることも必要なのだと思います。

喝を入れたあとに忘れてはいけないこと

目上の人に対して「喝」なんて入れたら、そのあとのことは正直、結果はわたしにもわかりません(笑)。

でも大切なのは、喝を入れたあとに引きずらないこと。ある意味では「鈍感」になって、必ずフォローをする。たとえ気まずくても、「○○さん、昼ご飯行きませんか?」などと、むしろ勢いをつけて距離を縮めるフォローをするのが、相手に対する尊重の姿勢でしょう。

「喝」が、怒るのとなにが違うのかというと、あくまで自らが手綱を握り、自分の感情をコントロールしているということです。

かつてわたしの場合は、そこに怒りの感情が含まれていたのかもしれませんが……、本来は怒りをそのまま相手にぶつけるのではなく、きちんと手綱を握って伝えるイメージです。

立場の強い者に対しては、ときにそんな方法を取らなければいつまでも虐げられることもあり得ます。そして、相手はいつまで経っても目醒めないでしょう。

もちろん個々の状況によりますが、わたしの経験では、真正面から「NO」を突きつけた相手と、そのあとも長くつき合いが続いているケースは多いです。

むしろ、みんなが「おかしい」と思っていることは、リーダーが率先していわなくてはなりません。

「怒ることは自分に毒を盛るに等しい」ことは絶対に忘れてはいけませんが、自分よりも強い人に対しては、ときに怒りの感情をうまく「使う」ことも必要だととらえています。