3つのハラスメント攻撃パターンに合致

今年7月、私は、『「女子ボス」のトリセツ』(フォレスト出版)を上梓した。女子ボスとは簡単にいうと「深刻な劣等感を抱え、強い攻撃性で他者を支配しなければいられないほど、自己存在への揺らぎがある人々」のことで、社会に思うままにのさばっている。

川村佳子『「女子ボス」のトリセツ』(フォレスト出版)
川村佳子『「女子ボス」のトリセツ』(フォレスト出版)

母親・碇被告を精神的に支配していたとされるママ友・赤堀被告は、まさにその典型であり、今回の事件は、女子ボスハラスメントの最悪な典型事例といえる。ママ友同士であった赤堀被告と碇被告は、どのようにして支配・服従関係に陥っていったのか。ここで、ハラスメントの攻撃パターンをいくつか紹介したい。

1つ目に、「あんたの夫は浮気しているから離婚したほうがいい。ボスが証拠を集めているから、夫には問いただすな」など、嘘をつく点が挙げられる(碇被告の弁護人が、碇被告の裁判内で語った、赤堀被告が碇被告への発言事例、以下同)。

これは、ハラスメントの攻撃パターンによくあることで、人間関係を切り離していく「三角コミュニケーション」に該当する。味方を装いながら、今ここにいない第三者の名前を利用し、周囲との人間関係から孤立させるやり方だ。

今回のママ友・赤堀被告は、まずは夫との人間関係を破綻させようと思ったのだろう。でっちあげた夫の浮気話で碇被告を不安に陥れ、自分だけを頼るように徐々にコントロールしている。ちなみに、報道によると、赤堀被告が語ったという「ボス」もでっちあげた架空の人物とみられる。

2つ目に、「あんたは子供に甘い。恩を仇で返すな。何のために生まれてきたのか。死ね、海に沈める」など、精神論的なところで攻撃をしている点である。

これは、ハラスメントの攻撃パターンである「人格攻撃」に該当する。何がどう子供に甘いのかといった具体的な話し合いができないのであれば、一方的な攻撃である。

また「死ね、海に沈める」などは、人を傷つける意図がある暴言である。相手との「対話」が成立しない一方的な攻撃は、人格攻撃に該当する。人格攻撃は、相手を恐怖の底に突き落とし、委縮させていく立派な暴力である。

そして、3つ目に挙げる点は、身体的暴力である。机を蹴り飛ばす、羽交い絞めにするなど、身体的暴力はハラスメントの攻撃パターンの中で最も悪質である。

今回の事件は、子供にまで影響が及んでしまった。これは、女子ボスハラスメントのなかでも最悪の事例である。ママ友・赤堀被告は母親である碇被告に対しても叩く、土下座をさせるなどの暴力を振るっていたが、最終的に子供に向かってしまったのは、非常に残酷な出来事である。男児を投げ飛ばし、必要な食事を与えず、身体的暴力を続けた罪は、あまりに重い。そして、死に至らしめたことは、最悪の結末である。

精神・身体的暴力は、人間から判断能力を奪い、尊厳を奪い、命まで奪う犯罪である。女子ボスのターゲットになってしまうと、人間としての尊厳を失い、大切な家族や友を失い、職場を失い、命まで失いかねないことを、知っていただきたい。