燃料、飲食料品の輸入価格も上がっている

その一方で、米国では連邦準備制度理事会(FRB)が需要を抑えてインフレを退治するために追加利上げを余儀なくされている。欧州中央銀行(ECB)はFRB以上にインフレ退治を徹底しなければならない厳しい状況に追い込まれた。

多くの新興国でも通貨を防衛しインフレ圧力を抑えるために、想定を上回るペースで利上げが実施されている。徐々に日本銀行は金融政策の正常化を目指すだろうが、それには時間がかかる。内外の金利差は拡大し、円安が進んだ。

それと同時に天然ガスなどの価格が上昇し、輸入物価は急騰した。日銀が公表した7月の輸入物価指数(速報)は前年同月比48.0%上昇した(円ベース)。品目別に見ると、石油・石炭・天然ガスは同127.9%上昇した。飲食料品・食料用農水産物は同30.4%の上昇だった。

その結果、7月の貿易収支(速報)は1兆4367億円の赤字だ。赤字は12カ月連続だ。わが国におけるコストプッシュ・インフレ圧力の高まりによって、ファミレス業界は苦肉の策として店舗閉鎖をより強化せざるを得ない状況に追い込まれている。

深刻なのはファミレスだけではない

厳しい事業環境に直面しているのはファミレス業界だけではない。感染再拡大や中国経済の失速などによってインバウンド需要が落ち込んだ。それによって、ファミレス以外の飲食、宿泊、交通などサービス業の収益環境はかなり不安定だ。製造業の分野では、わが国経済の雇用や所得環境の安定に決定的な役割を果たした自動車の生産が停滞している。

浅草仲見世通り
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燃料高などによって運輸業を中心に中小企業の事業環境の厳しさも増している。ファミレス業界のように、生き残りを目指してコストカットをさらに強化しなければならない企業が増える展開が懸念される。

ただし、コストカットなど企業の自助努力には限界がある。収益を獲得して新しい取り組みを強化するために、増加したコストの価格転嫁を余儀なくされる企業はこれまで以上に増える可能性が高い。それによって家計には生活費の負担がより重くのしかかるだろう。