「あの人と話したくない」まずはその感情を一旦排除する

マスターテープの編集権を自覚したら、次は相手への感情を一旦排除していくことをしていきます。ステップ2です。

人間関係が悪い相手との嫌な思い出や、次にコミュニケーションを取るときを想像すると、人間には何かしらの感情が湧いてきます。怒り、不安、悲しみ、ムカつき、恐怖、言葉にできないモヤモヤ、心の重みなどの感情が生まれ、それがあるから「嫌だな」という言葉が出てくるわけです。

頭を抱える女性
写真=iStock.com/FatCamera
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この感情を、この時点で排除することをしてみてください。忘れ去る必要はありません。一旦、横に置くのです。

そのときにヒントにしてもらいたい考え方があります。「愛の反対は憎しみではない。無関心である」というマザー・テレサの言葉です。

一般的に「好き」という感情の対極にある感情は「嫌い」だと思われています。

ですが正確には、好きも嫌いもどちらも「相手への関心」という共通の気持ちが存在しています。何かや誰かに関心があって、その判断が好きになるか嫌いになるか、ということなのです。

逆に、関心がないものには好きも嫌いもありません。

道端に落ちている石ころを好きや嫌いで判断する人はいないでしょう。自分が歩くときに躓きの原因にでもならない限り、人はそういうものに関心を払わないのです。

相手もまた、自分に関心を抱いていたことに着目する

これはクレームの世界でよく言われますが、最大のクレーム客とは何も言わずに黙って離れていくサイレント・マジョリティです。

むしろ、何かしらの声をあげてクレームをつけてくる人は少数派で、そこには(単に憂さ晴らしをしたいだけというのもありますが)何かしらの業務改善のヒントや、サービス業として至らない点をお客さま目線で指摘してもらっていることが隠されていたりします。

だから「クレームは宝だ」と言われるわけです。

同様に、嫌な思い出のもととなっている嫌な出来事がある場合、そこには何かしらのアクションがあったはずです。

ということは、相手はその時点で自分に何かしらの関心を抱いていたからにほかなりませんし、あなたが好き/嫌いの感情を持っているということは、あなた自身もその相手には関心を持っていることになります。

無関心であれば、そもそも人間関係の悩みは生まれないからです。

このことに気づき理解すると、人間関係でこじれている相手へあなたが持っていた感情の囚われから一旦は離れて、落ち着くことができるはずです。

その落ち着いた目線でもって思い出のマスターテープを見直してみましょう。すると、相手の行動や発言の中でも理解できる部分や、納得のできること、意外と興味深いことなどが見えてくることがあります。