根拠は30年前から変わらない約款

だが、釈然としない利用者は多いに違いない。

「『日数分だけ』補償という考え方がセコい」という声も聞こえてきた。「おわび」が3日分ということなら、利用者がKDDIに支払っている月額料金の1割程度が返金されると計算した人は少なくないだろう。4000円なら返金額は400円、少しヘビーユーザーで1万円使う人なら1000円となる。

だが、そうはならなかった。補償額算出の基準となった約款がくせものなのだ。

KDDIの約款は、NTTドコモが設立直後の1992年に設けた補償基準を踏襲しているという。まだ携帯電話がほとんど普及していない時代の産物で、30年間変わっていない。

ところが、時代は様変わりした。ネット社会が浸透し、多様なデジタルサービスが広がる中、通信障害が与える社会的影響は段違いに大きくなっている。

にもかかわらず、補償の考え方だけは旧態依然なのである。

韓国では2時間以上の障害で契約料の10倍の返金も

参考になるのが韓国の例だろう。

2021年10月に発生した通信大手KTの約3500万回線が1時間半不通になった通信障害で、1人当たりの補償額が100円ほどだったため、利用者の不満が爆発した。

これに危機感を募らせた政府は、通信障害の補償に関する指針を改め、2時間以上の障害が起きたときには、時間当たりの契約料金の10倍の返金を求める指針を出した。今回の「事件」に当てはめれば、月額基本料金を上回る返金額になるという。

欧米でも、通信障害に備えたルールづくりが進んでいる。

通信会社の社会的責任の大きさを踏まえれば、利用者目線に立って約款を精査し直し、補償の在り方を全面的に見直すべきではないだろうか。

KDDIに社会インフラを担う自覚はあるのか

「便利になればなるほど、こういうリスクは全ての人間が覚悟しなければならない時代にさしかかってることを認識しなければならないですね。一昔前までは携帯すらない時代があったのですから」

ネットには、不満や怒り、バッシングばかりが満ちているわけではなく、このような時代を見つめる書き込みもあった。

高速通信の5GやモノがつながるIoTが着々と浸透する中、通信ネットワークに結びつけられたネット社会は、ますます高度化していく。

携帯電話会社から社会インフラ会社へ。

時代が求める通信会社像は、明らかに変わってきている。そのことを通信会社自身が理解し、実践することが求められている。

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