2012年度予算の政府案の一般会計は約90兆円だが、財源は税収が約42兆円、新規国債が約44兆円である。他方、11年12月末で国の借金の総額は958兆6000億円に上る(国債発行残高は約782兆円)。11年の日本のGDP(名目)は約468兆円だから、対GDP比は205%弱で、先進国で最悪だ。

なのに、国債の金利急騰や価格暴落と無縁だったのは、第一に93%以上が国内消化で、11年6月の段階で約1491兆円という国民の個人金融資産がそれを支えているからだ(ローンなどを除いた実質額は1138兆円)。第二に国際収支の黒字国で、巨額の対外純資産を保有している。第三に租税負担率が低く、増税余地が大きいのも安定要因だった。

ところが、ここへきて破綻の危機が迫っていると警告する声も強い。個人金融資産の実質額から国の借金を差し引いた約179兆円が国内消化の天井だとすると、いまのペースの国債発行が続けば、余力は約4年という計算になる。

菅直人内閣では環境相だった小沢鋭仁氏。

だが、異論も多い。

「これ以上、発行を増やすと暴落すると財務省はすぐ言うが、実際は国債は高く買われている。簡単に暴落なんて起こらない。そのままだと危ないが、しばらくはじっくりやれる状況だと思う」

民主党の小沢鋭仁元環境相は言う。

一方で、数字にトリックありと説く人もいる。歳出の国債費には将来の国債償還に備えて積み立てる債務償還費が約12兆円、計上されているが、これを除いた32兆円が国債残高の純増分と見ると、余力は約5年半となる。

さらに、元大蔵官僚の高橋洋一(嘉悦大教授)の著書『財務省が隠す650兆円の国民資産』によれば、10年3月末の国のバランスシートでは、負債1019兆円に対して、資産が647兆円もあり、「日本の政府資産比率は先進国で最も高く、その大半は民営化などで売却可能なものが多い」という主張も根強い。

ほかにも、「霞が関の埋蔵金」と呼ばれる特別会計の積立金の余剰資金を取り上げ、財政の無駄などを取り除いた場合の財政赤字は言われるほどの巨額にはならないという。

とはいえ、財政難で毎年の予算編成もままならない。財政危機を強く意識する野田首相は「不退転の決意」「政治生命を賭して」と叫び、消費税増税にまっしぐらに突き進む構えである。

(文中敬称略)

※すべて雑誌掲載当時

(尾崎三朗=撮影 PANA=写真)