アウトプットをたくさんすると、インプットできる

――「パパ料理」。このフレーズにおそらく誰でも興味は持つと思うのですが、そこからビジネスにつなげるというのはまた別の話ですよね。

世の中に物事を伝えていくのには2つテーマがあると思うんです。1つは「思う力」、2つめは「伝える力」。思うのと伝えるのはまったく違うスキルです。自分で事業を立ち上げるような人は「思う力」はある。ただ「伝える力」が弱い。

僕はこのうち「伝える力」についてはデジハリの広報時代に身についていました。だからパパ料理について自分で思って、自分で伝えられたのだと思います。

――具体的には。

メディアにたくさん紹介いただけるような情報発信をしました。広報、広告の違いを分かっていたし、付加価値とブランドを分かっていたので自分で自分のブランディングをしていきました。

僕自身がブランドであるのでプロダクション仕事はしないし、ノークレジットな仕事はしないと決めていました。たとえば自分から営業をした時点で、権威ではなくなってしまいます。そのあたりのことを考えて行動しました。

弊社の4つめの柱として広報PRのコンサルを顧問契約で行っていますが、意識してデジハリの話は持ち出さずに行っています。ビストロパパとして仕事をスタートしたあとどうやってTV・ラジオに出たのか、新聞・雑誌から声がかかったのかなど伝授しています。

――起業への憧れはもともとあったのですか。

デジハリは一言でいうと、誰かの夢を実現させる商売だった。それを言い続けていると「お前はどうやねん!」と日々突きつけられることになります。

今の仕事でも徹底したいと思っているのは、過去のノウハウや人のノウハウでアドバイスをするのではなく、今の自分にできることをアドバイスしたいと思っているんです。

デジハリでも最初は全体を把握して自分の言葉でアドバイスできていたのに、新しい技術が次々にでてきて、中にはわからないものも出てきました。そうなると、この人とこの人をアサインすればいいカリキュラムができる。そうしてできたものを「信じる」というようになってくる。本来なら自分でいいなと「納得」したものだけを伝えたいのですが。

だから今、レシピは全部自分で考えて自分でつくり、本当にお勧めできるものだけを自信をもって提供しています。

――この仕事をしていくうえで、自分自身へのインプットで心がけていることはありますか。

逆説的になるかもしれないですが、アウトプットをたくさんすると、インプットができると思うのです。つまり、アウトプットの場を普段から多く設けることで、普段のなにげない生活からでもたくさんのことを拾ってこられるように意識が高まります。

ブログがあることで普段の生活習慣から多くのことに気が付けるようになる。これは芸人さんと同じ。たとえば、笑福亭鶴瓶さんなんかは、トーク番組というアウトプットが多い場をもつことで、大阪から東京にくる新幹線の話で一時間もつ話を仕入れられたりするわけです。これは訓練だと思うのです。継続が大事。ネタは枯渇したときにこそ、違う角度や宝庫に気がつくものです。

――サラリーマンだとそうしたインプットは一人ではなくみんなでやっているから、そこまで研ぎ澄まされない。起業すると自分が商品だから常に自分を高めていかないといけないと思う。そうなると今のこの瞬間を逃せない、ということですね。しかし、休みがないですよね。それに疲れませんか。

疲れた瞬間に、パパ料理はダメなんだと思っています。それがいつくるのか分からないのですが、ここまでを振りかえると1個のことを見つけると長くやるタイプなんです。だから最低10年くらいはできるかなと思っています。