なぜ日本企業は海外市場で勝ちきれないのか。経営コンサルタントの太田信之さんは「自分たちを今の規模にした運営の手法や体制を疑う気がない。だから、『新卒入社の男性』を中心とした企業文化が温存され、海外市場でつまずいてしまう」という――。
スーツを着たうなだれる女性
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なぜ日本企業は海外市場でうまくいかないのか

国際協力銀行(JBIC)の2020年度の調査「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」によると、日本の製造業企業における海外生産比率は33.2%(2020年度見込み)、海外売上高比率は35.6%(同)と、ほぼ3分の1を占めている。また、業種にもよるが、大手メーカーの多くは売上高の半分以上が海外市場だともいわれている。

縮小を続けている日本市場を考えると、今後の海外売り上げの維持、成長が、企業存続の生命線といえるだろう。しかし実際のところは、多くのメーカーが海外での事業展開には苦労しているのが現状である。それはなぜなのか。

海外市場において日本企業同士が競合する時代はとうの昔に終わった。日々の競争相手が海外企業になって久しい。それにもかかわらず、大手メーカーでも、競合企業について尋ねると、いまだに同じ業界の日本企業の名前が挙がってきて驚かされることがよくある。

1980年代まで自分たちが国内で切磋琢磨せっさたくましてきた同業界同士での競争が、今なお記録映画の残像のように残っているのだろう。

しかし、現場での競争は今や海外企業との競争だ。海外での競争で勝ち続けるためには、海外市場での競合企業の考え方、仕事の進め方に合わせていく必要がある。

そのためには、なにも特殊なことをする必要はない。市場や顧客の求める価値を理解し、作り、提供して、フィードバックをもらいながら信頼を勝ち得るという基本的な業務を設計し、磨き上げるだけのことだ。

しかし、日本の大手企業はなかなかそれができない。その理由の一つは、自分たちの意思決定の仕方、仕組みが変えられないからだ。

変えられない理由、それは自分たちを今の規模にした運営の手法や体制そのものにある。

それが、日本企業が海外における事業展開で苦戦している大きな要因となっている。