4月以降、外国人の日本株買いが一時的に戻ってきていたが、ここからさらに上値を窺うためには、下期の増益傾向が加速するか、金融相場に移行できるかどうかが必要になる。ことに世界中であり余っている資金が日本に来るか否かがポイントだ。

日本株は、ブルドックソース事件などがとどめをさしたガバナンス問題で売られてきたが、ここにきて「変わりつつあるかもしれない」と、海外勢のトーンに変化が出てきている。増配に踏み切る、自社株を消却する、場合によってはM&Aを実施するなどして適正な資産構成を志向する動きが出始めているからだ。

その動きが本物なら、組み入れ比率を大幅に引き下げていた日本株を戻してもいいのではないかと考え始めたのが現状だろう。その意味で期待しているのが内需型企業のROE(株主資本利益率)が上昇することだ。手元流動性を厚く持ちすぎている企業はまだまだ多く、ROEがすぐに上昇するとは思えないが、金融や不動産などのセクターで資産効率が向上してくればパワフルな株価上昇につながると思われる。

ただ現状はコストアップインフレへの対応がネックになっている。原材料費の価格転嫁では、値上げしたら売り上げが半分になってしまったという商品がある一方で、バターなど値上げがスムーズに進む商品もあり、価格転嫁力の強さによって明暗が分かれている。

商社や資源保有企業は抜群の価格転嫁力を持っているが、問題はエンドユーザーが買うかどうか。ここでポイントになるのが収益構造と消費者の心理的な景況感だ。

前者においては、十分にスリムな体質になっているか否か。たとえば石油会社。かつてガソリンスタンドは6300軒あったが、今は3800軒ほどまで減少した。しかしまだスリム化が十分とは言えない。こうしたところは利益が出る価格転嫁は進みにくい。

消費者心理が改善し、消費が活発化するかどうかは景気によるところが大きい。「景気の気の字は気持ちの気の字」であり、どちらに転ぶか読みにくいが、いずれにしても日本が変わるというメッセージを発信することが世界の資金を日本に呼ぶことにつながってくるだろう。

(構成=仁科剛平)