「県立高校の併願校」という位置づけになっていた

横浜創英は、創立82年という歴史がある学校です。工藤先生によると、これまではきめ細やかな指導を行うサービス提供型の学校だったそうです。

高校は、県立高校の併願校という位置付けで、第一志望の生徒は2割程度。大学受験でリベンジしようと一生懸命頑張っている生徒たちが多かったのです。

「サービスを提供すると生徒は受け身になり、手をかければかけるほど生徒は自立できなくなります。だから、生徒たちが自ら試行錯誤を繰り返し、人の力を借りながら何度も失敗できる学校を目指している」と工藤校長。

「うまくいかないことがあたり前だということを教えるのが教育だ」という工藤校長の言葉がとても印象的でした。

生徒の半分が第一志望で入学する学校になった

こうした変化をもたらすためには、当然、教員のマインドセットを変えていかなくてはなりません。

そこで工藤校長がまず行ったのが、教育の最上位目的を共有することでした。

「考えて行動できる人」という建学の精神のもとに、丁寧に対話を続け、教員全員で新たに教育目的を共有しました。それが「自律・対話・創造」です。

そして、全職員に「目指す方向性に向かって逆戻りする提案にはNOを言うが、1mmでも前進する提案ならGOを出す」と宣言して、先生たちの「教えない教育」の探究が始まっていったのです。プロジェクトマネージャーとしての工藤校長のスタイルは、山本五十六の「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」のようでした。

リーダーとして職場の心理的安全性を保った上で、教師が自分ごととして、教えない教育への変換に取り組んでいったのです。

こうして、全教員が一致団結して学校改革を行ってきた結果、今では教員の指導の仕方も全く変わり、高校から入学する生徒の半分は第一志望で入学しています。