心当たりのない体調不良には、どう対応するべきなのか。順天堂大学医学部の小林弘幸教授は「軽い気持ちでネットを検索すると、思いもよらない重病かもしれないと思い込んで、心を病んでしまうかもしれない。自分で判断するのではなく、症状が2週間以上続くのなら、医師の診断を受けたほうがいい」という――。

※本稿は、小林弘幸『眠れなくなるほど面白い 図解 自律神経の話』(日本文芸社)の一部を再編集したものです。

パソコンのモニターを見て不安になる女性
写真=iStock.com/Dima Berlin
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体の不調をネットで検索してはいけない医学的理由

誰しも一度は体の不調の症状をネット検索したことがあると思います。最初は、軽い気持ちで検索したのに、思いもよらない重病の可能性があるという記事を読んでしまい不安になったことはありませんか?

例えば、腰に不快感を覚えて「腰 違和感」などと検索してみたときに「がん」などの症状と一致していたら……。あらぬ心配が一気に沸き上がり、頭の中が病気のことでいっぱいになってしまうでしょう。

こういったインターネットやテレビなどに氾濫する様々な情報にまどわされて心を病んでしまうことは「サイバー心気症」と呼ばれています。ひどい場合は自分が病気だと思い込み、体に痛みとして症状が出てくることまであります。

病院へ来院する患者さんのうち、実際に病名がつくような方は1割ほどで、残りの9割の患者さんは特に疾患のないような体調不良の場合がほとんど。病気の検索をして心を病んでしまうくらいなら、すぐに病院へ向かうほうが賢明です。本当の病気なら早期に治療を開始できるし、そうでない場合は、心の安堵あんどを得ることができます。

病院へかかる目安としては、体の不調が2週間続くような場合。短期間の不調なら質のよい睡眠をとり、正しい入浴やストレッチなど本書で紹介する自律神経を整える方法で改善することがほとんどです。

体内時計と自律神経は密接につながっている

朝になると目が覚め、夜には眠くなるという体のサイクルは、私たちに備わっている「体内時計」によって管理されています。

体内時計は自律神経のリズムとも密接につながっています。日中は交感神経が優位になり、夜は副交感神経優位へと切り替わるのが自律神経の正常なリズム。これが体内時計とリンクすることで、昼には活発に動くためにアクセルが、夜はしっかりと休むためにブレーキがかかるようコントロールされています。

ところが、夜更かしをしたり、朝寝坊をしたり、食事の時間がバラバラだったりといった不規則な生活を続けていくと、自律神経のリズムも乱れてしまいます。交感神経と副交感神経の切り替えがスムーズに行かなくなり、朝になってもすっきり起きられない、深夜になってもなかなか寝つけないといった不快な症状が現れてきます。

さらに、人間の体内時計の周期は1日約25時間で、地球の自転周期である1日24時間とわずかなズレがあります。通常であればそのズレを修正しながら体のサイクルを保てるのですが、不規則な生活が続くと体内時計のズレも大きくなり、自律神経がますます乱れる悪循環に陥ってしまうのです

交感神経が活発になる朝にはしっかりと目を覚まし、副交感神経がピークになる深夜にはぐっすり眠れるよう、規則正しい生活リズムを心がけることが自律神経を整えるための基本といえます。