例えば、緑の党の党首で現政権の閣僚でもあるマリア・オヒサロは、マリンと同じく幼少期に苦労した人物だ。1歳の誕生日は母親と共に保護シェルターで迎え、その後も経済的には常に困窮状態にあった。しかし、貧困に関する研究で博士号を取得し、政界でも活躍している。他に難民から国会議員になったケースもある。

そうした活躍を可能としているのは、まず家庭環境や経済的事情、性別、年齢に関係なくトップレベルの教育を受けることができる社会システムだ。そして政党でも、手腕を示せば、地盤や看板、お金がなくとも政治家になることができる仕組みが整っている。

政治の世界以外でも年功序列は重視されず、年齢も性別も関係ない

マリンが市議会議員や国会議員になるにあたっても、彼女の生い立ちは全く影響しなかった。幼少期の話やレインボーファミリー出身だということがオープンに知られるようになったのは、議員に当選してからだ。

加えて、フィンランドでは年功序列はそれほど重視されていない。むしろ、フットワークが軽く、柔軟で新しいことに敏感な若い人たちに仕事をどんどん任せて、年長者はそれを支える側に立つ文化がある。

出自や年齢、性別に関係なく機会の平等が見られるのは、政治の世界だけの話ではない。

日本でも人気のテキスタイルのブランド、マリメッコは2015年に勤続10年の34歳女性ティーナ・アラフフタ・カスコを社長に選んだ。通信インフラの開発などを行うノキアの前会長リスト・シラスマは42歳で取締役になり、46歳で会長に就任した。近年のスタートアップ企業や大成功したゲーム会社、IT企業のCEOや役員、経済界のインフルエンサーたちも、たいてい20代から40代で、女性も多い。

フィンランド、ヘルシンキのマリメッコストア
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私が以前つとめていた、体質的には古いと言われる産業機械のエンジニアリングメーカーでさえも、副社長に30代がいたり、エンジニア出身ではない女性が要職に就いていたりする。

大学に目を移せば、10代後半から20代前半だけでなく様々な年齢や背景の人たちが学んでいて、何度目かの学位を目指している人たち、失業などで学び直しをしている人もいる。転職も多く、40代、50代になってから全く違うフィールドに挑戦する人もたくさん目にしてきた。