「このままでいいのだろうか」。そんな気持ちにはどう向き合えばいいのか。禅僧の南直哉さんは「その根底には『自分の生活を思いどおりにしたい』という欲望がある。だから、話の次元を変えなければ、そうした不安は永遠に解決しない」という――。

※本稿は、南直哉『「前向きに生きる」ことに疲れたら読む本』(アスコム)の一部を再編集したものです。

散らかった部屋の隅に座り込んでいる女性
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「人間の欲望」に振り回されずに生きる方法

時間、地位やお金、承認や賞賛、特定の状況、たくさんの友だちや人脈など、「欲しい、欲しい」と願い続けている人がいます。

常に何かが足りないと感じている。そういう人たちは、本当に何かが欲しいのではありません。多くの場合、「欲しい」の底に強い不安があるのです。

だから、「○○が欲しい」と話す人たちに、「何がどのような理由で欲しいのか」を尋ねても、あいまいな答えしか返ってきません。また、話を煮詰めていくと、じつは簡単に手に入るものを求めている場合もあります。

私は福井県の永平寺で僧侶として20年近くを過ごした後、縁あって青森県にある霊場、恐山の院代(住職代理)となり10年以上が経ちました。その間、生きづらさや苦しさを感じているという、たくさんの方々とお会いしてきました。

皆さんのお話を伺う中で、仏教の考え方がさまざまな問題の解決の糸口、生きるためのテクニックとなるのだということに気がつきました。

仏教は、こだわりや執着から起こる悩みや苦しみの正体を知り、その取り扱い方を身に付けるためのツールとして利用できるのです。

ここでは、拙著『「前向きに生きる」ことに疲れたら読む本』(アスコム)の中から、自分の中の本音を見極め、不満や不安などの負の感情とうまく付き合う方法について、いくつかお話したいと思います。

「自分が何を大切にしたいのか」を見極める

以前、悩み相談に来た女性が「結局、私は心安らかな毎日が欲しいだけなんです」と言うので、「それは、どういう毎日ですか?」と尋ねてみました。