スギとヒノキの花粉は見分けがつきにくい

実際の花粉量も観測している。同社は、自社開発した球状の「ポールンロボ」をサポーターの家屋など日本全国約1000カ所に設置している。ロボはファンで空気を吸い込み、吸引した空気にレーザーを照射。その反射から粒の大きさや凹凸度を観測する。砂やホコリと花粉は大きさや凹凸度が異なるため、実際に飛んでいるおおよその花粉量を計測できる。

「現在、ポールンロボはスギとヒノキ、北海道でシラカバをターゲットに観測しています。実はスギとヒノキは大きさや凹凸度が似ていて、ロボでは見分けがつきません。ただ、飛散時期が異なるので、それで区別しています」

ウェザーニューズが全国に設置しているポールンロボ
写真提供=ウェザーニューズ
ウェザーニューズが全国に設置しているポールンロボ

ウェザーニューズの予報がユニークなのは、気象データだけでなく、サポーターと呼ばれる、自分がいる場所の天候を共有する会員から症状の情報も加味している点だろう。

「同じエリアでも、風向きや気温などの気象条件によって花粉の感じ方が異なります。それを考慮することで、時間単位などのより詳細な花粉予報が可能になります」

冒頭に紹介した今年の花粉予報も、こうしたさまざまなデータとシミュレーション技術によって導かれているわけだ。

毎年のように花粉が増え続けている理由

今年も花粉は例年並みに多いが、長期ではどうなのか。東京都花粉症対策検討委員会のデータによると、東京都の花粉量は年によってバラツキがあるものの、過去10年平均で見ると緩やかに上昇を続けている。2019年時点の過去10年平均は、1994年時点と比べて2倍以上だ。毎年のように、「今年は花粉がひどい」「いままで平気だったのに急に花粉症になった」という会話が飛び交っているのも納得だ。

花粉が増えている原因の一つは、植林だ。1950年代、戦後の混乱から脱しつつあった日本では、住宅建築用材として木材の需要が増大した。伐採された跡地には、早期に森林を回復する観点から成長が早いスギやヒノキなどの針葉樹が植えられた。ピークは1950年代後半から1970年で、毎年35万~40万ヘクタールの植林が実施され、いまでは日本の森林のうち人工林の41%、そのうちスギが44%、ヒノキが25%を占めるまでになった(林野庁「森林資源の現況」平成29年3月31日現在)。

上向きの矢印と成長チャート
写真=iStock.com/alexsl
※写真はイメージです

スギは、樹齢25~30年から花粉を本格的に飛散するようになる。1960年代に植えられたスギ版「団塊の世代」とでも呼ぶべき木々たちは、1980年代後半から1990年代に花粉を飛ばし始めた。団塊の世代は元気で、いまも旺盛に花粉を飛ばし続けている。大人になったスギが累積してきたことで、中長期的に花粉は増加トレンドにあるわけだ。