被害者の自己責任で片づけていては被害はなくならない

一方、本人確認の厳格化のコストは運営会社にとっては悩みの種かもしれません。

前出・千葉さんによれば、導入する本人確認の手法にもよりますが、「固定費(初期導入費)+1件数百円~」の従量課金モデルだといいます。規模にもよりますが毎月数十万~百万円以上のコストがかかります。それでも、きちんとした会社は大きく増える会員登録に合わせて自社で本人確認のリソース(固定費)を用意するより専門の会社に依頼する判断をしており、そのことをHPなどで告知しているでしょう。

現在、恋活関連だけでなく、趣味・ビジネスなどの多くのマッチング事業者が本人確認の重要性を認識しつつありますが、本人確認を厳格にして登録の手間を増やしすぎると、ユーザーがしびれをきらして離れてしまう事情もあり、確認強度の高さ設定は難しい部分のようです。

ソーシャルメディアの反応
写真=iStock.com/Aramyan
※写真はイメージです

これまでは、マッチングアプリを利用しての詐欺被害は、利用者の自己責任。そう思う方も多かったかもしれません。しかしその考えでは、被害をなくせません。

詐欺被害者の側も最初は相手が悪事をもくろんでいるのではないか、疑っています。しかし、しょせん、詐欺への知識は素人です。巧妙な騙しの手口を見極める目など充分に持っていません。その結果、騙される人が一定数出てきます。利用者の判断や責任だけに任せるのは、酷な話です。

今後は、本人確認の基準が厳しいアプリを詐欺犯らは避けることになるでしょう。そうなれば、甘い審査基準のところに殺到する流れとなり、不正登録者が多いところは犯罪者の巣窟のような状況に。その結果、淘汰とうたされていくことになると考えています。

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