コロナ禍でインバウンド需要はゼロに近い状況が続いている。だが、ニセコでは外資系高級ホテルやコンドミニアムの開発が進んでいる。どういうことか。ニセコに詳しい金融アナリストの高橋克英さんが解説する――。
ニセコ駅
写真=時事通信フォト
2020年8月26日、ニセコ駅(北海道ニセコ町)

現在の客層は日本人富裕層とスキーヤーが中心

ニセコは、今や世界的なスキーリゾートだ。パウダースノーを求めて「外国人による外国人のための楽園」が形成されてきた。間もなく終了する今シーズン(2021年12月~2022年4月)のニセコの主要スキー場は、積雪量にも恵まれ、大盛況とはいえないが、ガラガラでもなく、特に土日は宿泊客を含め賑わいが続いた。時間帯によっては長いゴンドラ・リフト待ちの列ができるほどだ。

客層は日本人が主だ。ホテルコンドミニアムや別荘を所有していたり、「パーク ハイアット ニセコ HANAZONO」や「東山ニセコビレッジ・リッツ・カールトン・リザーブ」といった外資系最高級ホテルなどに滞在する国内の富裕層や、パウダースノーに魅せられた道内や首都圏のスキーヤーたちが訪れている。

もっとも、リフトも全面稼働ではなく休止しているものもあり、相変わらずホテル内のレストランも半分は休業で、100%の状態に戻っている訳ではない。ゲレンデ界隈のランチの値段も以前のようなラーメン1杯3000円から、日本人にも優しい価格に戻り、ほぼ100%外国人だったスタッフも日本語メインの日本人スタッフが中心になっている。

日本在住の外国人が「京都」感覚で訪れる

コロナウイルスが広まって3シーズン目。直近2シーズンはインバウンドゼロだ。しかし、不思議なことに、コロナ前ほどではないが、外国人スキーヤーも相当数目にする。全体の4分の1ほどの割合だろうか。インバウンドはほぼゼロなのに、一体どういうことだろうか。

彼らは、日本で暮らす外国人や、日本にビジネス目的で滞在している外国人とその家族だ。スキーではなく、雪と温泉と雰囲気を楽しみにきた人もいれば、全身をフランスの高級ブランドのモンクレールで揃えたモデルのようなスキーヤーも目につく。

アメリカ人やフランス人、ドイツ人に香港やシンガポールからの華僑など、各国の大使館職員や欧米グローバル企業の駐在員、外資系企業や日本で事業を展開する起業家なども含まれる。かつて世界中に滞在していた日本の大企業の駐在員のように、彼らの処遇待遇は母国でのそれより恵まれているケースが多い。

こうした比較的裕福な彼らの世界でも、ニセコは既に日本を代表する世界的なスキーリゾート地として認知されているのだ。母国にはコロナで帰れない、またはせっかく日本に赴任しているんだから、グローバルブランドであるニセコに行ってみよう、ということになっている。休日や休暇を利用して、京都や鎌倉など日本の有名観光地を訪れるように、ニセコをチョイスして、彼らになじみのある外資系最高級ホテルに滞在する訳だ。

このため、パークハイアットやリッツ、ヒルトンなどには、外国人スタッフも多く、会話は基本英語だ。コロナで母国に帰国できない、またはできても隔離期間などで時間がかかることを恐れる外国人たちが、ニセコにとどまっているのだ。