サムライは、外資にいたのだ。そして、外資のサムライの執念が日本の産業空洞化に歯止めをかけている。岡のコスト論議は、さらに「日本の課題」へと深化していく。

「弊社の製品は、現状では、代理店さんがお客様に渡す前にボックスを開いて一台一台セットアップしているわけですが、もしも工場でつくる過程で、OSをインストールする前にお客様のカスタムイメージを入れてしまうことができれば、世の中のムダをひとつ省ける。工場でやる流れ作業のひとつに組み込んでしまうわけですから」

こうして、世の中からひとつでもムダを省いていき、そこで浮いたリソースをより創造的な仕事へと振り向けていくことこそ、現代の日本にとって最も大きな課題だと岡は指摘する。

「価格の大半を生産コストが占めるようなメチャクチャに安いものは海外で大量生産すればいいと思いますが、パソコンのように多品種少量生産が主流の耐久消費財に関しては、お客様のほうが日本で生産することの価値を認める割合が高い。だから、ビジネスとして成立する。日本でつくったほうがいいものは、ほかにもたくさんあるはずです。

現在、新興国と呼ばれている国々は、単に人口が増えているから経済が成長しているだけ。創造力を駆使して、成熟期を戦い抜く方法を世界で最もよく知っているのは日本人です。国内で厳しい競争を経験しているハイスキルな日本のビジネスマンは、語学力さえ磨けば、世界中から欲しがられる人材であることは間違いありません」

円高は日本および日本人の価値を見直す、いい契機なのかもしれない。

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