今の自分がいるのは全部『ゴッドタン』のおかげ

だからYouTubeを始めた。好きな芸人やモノを、ただ褒める。その一点に特化した、人のためになるYouTube。「徳井の考察」だ。だから腐り芸人とは言われつつも、いま僕は誰かを更生させたい一心で『ゴッドタン』に出演している。

徳井健太氏
徳井健太氏(©新潮社)

お前みたいなもんが、空気も読まずに褒めて……腐り芸人の主旨分かっているのかよ――。そんな批判があるのも知っている。けど、そんなの知ったこっちゃない。

とにかく『ゴッドタン』に出るとき、僕はいつも死ぬ気で、散る覚悟でやっている。

そして、少しずつ流れが変わってきた。「悟り芸人」なんて呼ばれることも増えた。なるほど、徳井はそういう人間なのか、と人を褒めたり諭したりする仕事も増えてきた。

全部『ゴッドタン』のおかげと言っても過言ではない。本当に感謝しています。

間近で見た芸人・おぎやはぎのスゴさ

とはいえ、僕なんかよりもよっぽど悟っていて、板倉さんや岩井よりもよっぽど度胸のある腐り芸人がゴッドタンにはいる。おぎやはぎのお二人だ。

矢作さんは、一体、人生何周目を生きているのだろうか。常に清潔感があり、やさしく、字まで綺麗。しかも菩薩のようによく笑ってくれる。けれど愛想笑いはしない。

僕が「ギャラ飲みしかできないようなタレントは終わっている」というような話をした時も、「それをしなければ生きていけない人間もいる、って分かってあげなきゃダメだよ」と諭してくれた。

どうしたらそのような発想ができるのだろう。これぞ悟り芸人だ。

対して小木さんの言うことは、放送できるかどうか、いつも際どいことばかりだ。しかも、喋り終わった後に自己防衛のためのフォローも入れない。SNSでの炎上なんてまるで気にしていない。

お笑いに対してストイックな猛者集団である『ゴッドタン』のスタッフ陣も笑わないくらいに冷ややかな視点から、ウィットに富んだことまで、お構いなしに聞き手側へ放ってくる。

声に出せないほど嬉しかった劇団ひとりの一言

ある日の収録後、劇団ひとりさんが佐久間宣行プロデューサーに言った。

「今日、2本分いったんじゃない?」この一言がどれだけ嬉しかったことか。

「腐り芸人」の企画は、いつも90分以上収録している。これはテレビ業界なら普通なことで、30分番組なら収録時間は60分から90分が相場だ。

どんなに有能なスタッフやタレントが集まっていたとしても、そのくらい収録すれば、当然無駄な部分や放送できない部分も生まれる。そこを編集で切り、30分の番組にしてもらっている。

だが、90分の収録を終えた後、「これは編集しても60分いけるんじゃない?」。そんなことを佐久間さんにさりげなく言うひとりさんの一言に、僕は声に出せないくらいの歓喜に沸いた。