「人の死」にまつわる仕事にはデマやウソが多い。葬儀業を営む佐藤信顕さんは、著書『遺体と火葬のほんとうの話』(二見書房)で、巷にあふれるさまざまな俗説を正している。佐藤さんのインタビューをお届けしよう――。
遺体安置所の男
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葬儀に関するデマには“実害”がある

——遺体と火葬のほんとうの話』では“死”にまつわる都市伝説やデマの真相を明らかにしています。ちまたで信じられる俗説を正そうと思った動機を教えてください。

一言で言えば、デマによる実害があるからです。

私の家は、祖父の代から葬儀社を営んできました。私も子どもの頃から家業を手伝っていました。死した人を無事に送り出せるように、また遺された人たちのお役に立てるように、とたくさんの人が葬儀の現場を支えています。にもかかわらず、「人が死んで儲かる商売だ」「葬儀屋さんって差別されるんでしょ」「人がイヤがる仕事だから高いお金をもらえるんでしょう」という陰口はなくなりません。

遺体や火葬の話については、あまり詳しく語られないせいか、先入観やマイナスのイメージを持つ人が少なくないのです。

それに、最近は「元葬儀屋の体験談」などと称して、ことさらセンセーショナルに話を盛ったり、でっち上げたりして不安や恐怖をあおって、本を売ろうとしたり、PVを稼ごうとしたりする人も出てきました。いまこそ死を見つめて生を充実させましょう……そのために、私の宗教に入信しなさい、私のオンラインサロンに入らなければならない、と宣伝する人もいます。

昔ながらの不安症法なのですが、事実に基づかない情報を流す人がいるため、葬儀や火葬の現場で実害が出てしまっている。