日本の女性が少しかわいそうだなと思うね

——この本のために今までに100人以上にインタビューをしました。彼らに来日公演のビートルズの音楽、そしてコンサートについてどう思うかを聞いてみました。それで気がついたんです。

ビートルズが来る以前、日本社会には世代がふたつありました。大人と子供です。でもビートルズの登場で、日本には新しいジェネレーションが生まれました。それが「若者」というジェネレーションなんです。ビートルズの音楽を愛したのは若者という新しいジェネレーションでした。

【ポール】そうなんだ。若者たち。おもしろいね。そんなことがあったなんて。
日本は興味深い国だ。日本は非常に男性中心の社会だ。ぼくの見る限りではそうだ。

ぼくの言う古典的な社会とはこのこと。古典的な社会では男尊女卑でしょう。イスラム文化やインド文化、ほかにもたくさん。日本の女性が少しかわいそうだなと思うね。彼女たちが幸せだといいのだけれど……。日本では男性が王様だよ。

こんなことがあった。ぼくがリンダと日本へ行った時、タツにこう言ったんだ。「夕食に奥さん連れておいでよ」って。

そしたら「妻はディナーの席とかあまり好きじゃないんですよ」ってタツは言った。ぼくらは奥さんをむりやり招待した。そうしたら奥さんがやってきた! とても楽しかった。

後から知ったんだけど日本のビジネスマンにとっては奥さんを仕事の集まりに呼ぶのはとても珍しいんだってね。普通は男はひとりで行動するそうだね。まあ、これも社会の違いってことだろうけれど。

アメリカでは演奏中ずっと叫びっぱなしだが…

——タツさんの奥さんにお会いしたことがあります。招待されたこと、とても楽しい経験だったと言っていましたよ。

ポールうん、楽しかったね。

——来日公演で、ほかに覚えていることは何かありますか?

【ポール】コンサート……。それまでとはまるで異なっていたことを覚えているよ。まったく違った……。文化は違うし(コンサート会場に)警察が来るし。今までそんなことはなかったから。

厳戒態勢の中羽田空港からヒルトンホテルへ向かうビートルズの4人。彼らが乗ったキャデラックリムジンはこの日のため購入された。
『ビートルズを呼んだ男』より
厳戒態勢の中羽田空港からヒルトンホテルへ向かうビートルズの4人。彼らが乗ったキャデラックリムジンはこの日のため購入された。

——警察に囲まれたのは初めてでしたか?

【ポール】武道館では警官が入場してきて、最前列に並んだ。2階の最前列にもだよ。そんなことは初めてだった。客の反応も(イギリスやアメリカとは)違っていたよ。日本人の観客は演奏を聴いて、曲が終わるまで騒がしくしない。アメリカじゃ演奏中もずっと叫びっぱなしさ。(アメリカのコンサート会場には)警官もいない。最前列はファンだから舞台に飛び乗ったりもする。