「社内→社外」に展開するアマゾンの常套手段

「Amazon Careの仕組みには、アマゾンならではの工夫が凝らされている。対面ケアのオプションを利用すると、アプリを通じて医師や医療従事者の到着予定時刻が提供されるが、これはアマゾンのアプリが荷物の配送でやっていることと不気味なほどよく似ている」(「TechCrunch」2021年3月19日

もっとも、これまでのアマゾンを知る方なら、この展開は予想がついたかもしれません。というのも、「まずは自社向けに展開し、成果が上がったところで社外にも開放する」動きは、アマゾンにしばしば見られるものだからです。代表的な例が、世界トップシェアのクラウドサービスであるアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)です。自社用に整備したクラウドコンピューティングを法人顧客にも提供するようになったのがAWSのはじまりでした。

【図表】アマゾンが自社業務を事業展開してきた歴史
図表=筆者作成 出典=田中道昭『モデルナはなぜ3日でワクチンをつくれたのか

それでも、このニュースは大きな衝撃をもって迎えられたはずです。これまでEC・小売を筆頭に多くの産業の勢力図を塗り替えてきたアマゾンが、本格的にヘルスケア産業に参入することを示すニュースだったからです。

バラバラに記録されていた医療データを一括管理

アマゾンのヘルスケア事業は、簡単に言えば、「アマゾン・ヘルスレイク」「アマゾン・ヘイロー」「アマゾン・ファーマシー」「アマゾン・ケア」「アレクサ」の5つが柱であり、それらがおりなすヘルスケアのエコシステムを、AWSが下支えする構造となっています。以下、アマゾンのヘルスケア事業5つを個別に見ていきましょう。

(1)AWSによる医療データ関連サービス「アマゾン・ヘルスレイク(Amazon HealthLake)」

2020年末にローンチされたアマゾン・ヘルスレイクは、AWSの1つの機能という位置づけです。その機能は、病院、薬局などから集めた医療データを人工知能(AI)によって整理・インデックス化・構造化すること。これまでの医療データは異なる形式やシステムで記録・保存・管理され、なおかつ完全性や一貫性を欠いていたために、誰にとっても利用しやすい形ではありませんでした。

アマゾン・ヘルスレイクは、その問題を解決、医療従事者や保険会社、製薬会社などに「使える」医療データを提供します。「例えば『血圧の高い患者にコレステロールを低下させる医薬品を使用して、昨年どのような効果があったか』といった質問に対して、迅速かつ正確に答えを見つけることが可能です」とアマゾンはコーポレートサイトで述べています。

ラスベガスのアマゾンフルフィルメントセンター
写真=iStock.com/jetcityimage
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