無縁に思える哲学とビジネスだが、哲学科出身のトップは「大学時代の経験が経営観の根幹にある」という。対極にありそうな両者をつなげるものは何なのか。3人のトップに話を聞いた。

私の哲学 芳井敬一の場合

私の父親は小学校の教諭で、幼少のころから私にも同じ道を歩んでほしいと言っていました。それは決して重荷ではなく、私自身の夢でもありました。中学、高校と進んでラグビーに出合い、大学はスポーツ推薦で入学しました。哲学科を選んだのは当時の教育学専攻が哲学科にあったから。なので、私が大学で学んだのは主に教育哲学です。

大和ハウス工業社長 芳井敬一氏
撮影=宇佐美雅浩
大和ハウス工業社長 芳井敬一氏

卒業後は小学校の教諭になるつもりでしたが、大学4年の夏合宿で大きな怪我をしてしまいます。手術を回避し秋のリーグ戦を目指したものの、出場は最後の2試合だけ。消化不良にどうしても納得がいかず「このままでは終われない」と、社会人でもラグビーを続けることを決意しました。小学校教諭になる夢は、そのときに諦めました。もちろん大きな葛藤がありましたが「きっと新たな道が開ける。前を向こう」と気持ちを切り替えました。

神戸製鋼のグループ会社に入って、神戸製鋼ラグビー部で3年間ラグビーをやり、選手を引退。その後も会社に籍を置いて、海外で仕事をするのを目標に頑張りました。