「ビッグ・エー」とは異なる戦略を試している

イオンはこれまで何度もディスカウントストアを仕掛けてきたが、成功してきたとは言いがたい。1990年代の「メガマート」、2000年代の「イオンスーパーセンター」を覚えている読者は限られるだろう。イオンが強みをもってきたのは、ショッピングモールに象徴される幅広い品ぞろえで多くの消費者を取り込む総合スーパーだったからだ。

しかし、ドン・キホーテやオーケーといったDSに加え、ドラッグストアのコスモス薬品が食品の扱いを増やすなど、競争が激化している。とりわけ「安さ」を求める声は根強い。

イオングループにはパレッテとは別に、「ビッグ・エー」というDSもある。「安売りの本家本元」だったダイエーが1979年に設立したブランドで、売上高は約1100億円、店舗数は約340店。相応の規模はあるが、イオングループの屋台骨にはなっていない。新型コロナウイルスの感染拡大で閉店した外食店の跡地などに出店しており、2025年度に店舗数を約5割増の500店に増やす計画だが、さらなる店舗増も視野に入れているはずだ。

世界中に9000店舗以上を展開するドイツの「アルディ」。
写真=iStock.com/Alan Morris
世界中に9000店舗以上を展開するドイツの「アルディ」。

イオンとしては、ビッグ・エーとは異なるパレッテという実験を行うことで、そこで得られた成果を今後のDS戦略に生かそうとする狙いがあるとみられる。

ヤオコーは「フーコット」でDS市場に殴り込み

海外でも安売り競争は過熱している。その象徴が「ハードディスカウンター」と呼ばれるドイツのアルディと同じドイツのリドルだ。小型店を中心に徹底した安売りと出店攻勢で勢力を拡大し、売上高は10兆円を超え、いずれもイオンを上回る。米国にも進出し、ウォルマートを脅かす存在となっている。徹底した合理化で少ない従業員でも店舗を切り盛りできるようにし、そこで浮いたコストを値引き原資にする。

いまや国内のDSは百花繚乱の状況だ。スーパーでは食品に強いヤオコーが21年度からDSの新業態である「フーコット」を本格展開する。アッパーミドルに評判のヤオコーが、買収した「エイヴィ」のノウハウを取り込みながらDSに乗り込んだ。32期増収増益の余勢を駆って発祥の埼玉県以外のエリアを開拓する。

また、21年3月期決算で売上高で5000億円の大台にのせたオーケーは関西スーパーへの買収提案に加え、「エブリーデイ・ロープライス(EDLP)」の攻勢を出店や安売りの対象商品拡大などでさらに強めていく考えだ。