ですから僕は「喋り」を大事にしています。それで一番大事なことは、例えばプレゼンを控えているとしたら、その当日まで喋りまくることです。飲み屋でも、友達と車の中でも、喋りまくるうちに、食いつきのいいところ、悪いところがはっきりして、どんどんムダがなくなっていくんです。「M-1グランプリ」の決勝で新ネタおろす芸人もいないじゃないですか。いろんな場でネタを披露してムダを省いていく。どんなにすごい芸人でも最初からネタが仕上がっていることはないですよ。

西野亮廣 お笑い芸人・著作家

僕も今度武道館でビジネスについて、それこそ資料を使ったりして講演をするんですけど、5~6人くらいのZoomを組んで喋って反応を見るっていうのを、3日に1度くらいやっています。やっぱり声の情報量ってすごいですから、自信があるのか、どこまで考えているのか、全部バレてしまうんですよね。たくさん話していれば、いろいろな質問をされるし、それ以降はその質問に対しての回答を用意しておける。だから、とにかく場数を踏んだほうがいいですね。そうやってブラッシュアップしていくと、伝えたいことの魅力もよりはっきりするはずです。

シュートは相手に決めさせる

あとはプロジェクトのチームに味方をつくっておくのも大切です。ですから会議のような場で、答えがAだとわかっていても、自分からは言わず、相手が言ったのに対して、「いいっすねえ」と同調する。そうすると西野に言われたAではなくて、自分で決めたAになるので、一生懸命やってくれるんですよ。シュートは相手に決めさせる、っていうことですね。

実際いま、田舎に土地を買ってアパートを建てたりしているんですけど、近隣住民に反対されると大変なんです。でも住民説明会とかは絶対ダメです。決まったことを説明しても誰も納得しない。だから「こういうことをやりたいんですけど、どうすればいいですかねえ」と住民の人に相談する。そしたら「こうしたらどうだ」と提案してくれるし、今後仲間として動いてくれますよね。

そして、自分のやっていることの魅力をより多くの人に伝えるため、「誰でもできることを誰よりもやる」というのを心がけています。例えば作家なら、サイン本を欲しがる人は必ずいるじゃないですか。そしたら、オンラインでサイン本屋さんをつくってしまって、サイン書いて梱包して発送すればいい。これって才能なんていらないし、やれば必ず届くんですよね。

2020年『映画 えんとつ町のプペル』を公開したとき、コロナ禍を踏まえて舞台挨拶を控えたんですよ。けれどそういう交流を楽しみにしている人もいるんですよね。そこで、握手もしません、挨拶もしません、でも一緒に映画を見ます、ということをやりました。一番最後に劇場に入ってきて、一番最初に出ていく。それを100回以上もやったんですけど、かなりハードではあります。だって知っている話を100分見なくちゃいけない。