夫婦は共同経営者である──「ファミリーキャリア」のススメ

お互いの人生やリソースにフリーライドして成り立つキャリアは、健全な夫婦関係を築けません。短期的には乗り切れても、長期で考えたときに必ずどちらかに不満が残ります。

そこで大事になってくるのは、お互いのキャリアを短期目線で見ない、長期目線で共有することです。その前提として、家事も育児も仕事もすべてを100%、どれも100点満点にこなすのは無理であると、2人で認識することです。

この文章を読まれているような共働き世代のワーキングマザーは、幼少期から努力してきた方が多いでしょう。困難も努力したり工夫したりして乗り越えてきたがんばり屋さんが多いはずです。

しかし、妻、母、会社員の三足のわらじを履き始めると、1日24時間しかない中で、どれも満足いくまでやることは無理だと気がつきます。それでも「私が頑張れば」と努力をしてしまう。

会社には毎日8時間近くも拘束されている。夫は多忙。核家族化で頼れるのは夫婦だけ。そんな生活になると、どうやったって仕事も家事育児も完璧にこなすのは無理になります。

すると、どうなるのか? パートナーに対して腹が立ったり、会社に対してなんとなく申し訳なさや不満を感じてしまうようになります。

そんな負のサイクルを脱するために、ぜひおすすめしたい考え方があります。それは、夫婦は「共同経営者」であり、夫と妻で「家族会社」を経営しているという発想です。

そこで長期の経営目標として、お互いのキャリア構築のタイミングを長期事業計画として立てていくことをおすすめします。

例えば、「子どもが小さいうちは大変だとわかっているけど、年齢的にどうしても仕事のアクセルを緩めたくない」と夫が言うのであれば、「じゃあ、あなたが(夫が)アクセルを踏むのは今のタイミングね」と家族として支える話をします。次に、「私がアクセルを踏むのは、子どもが小学校に上がったタイミングにしたい」など、お互いのキャリアビジョンを話し合うのです。

子供が包丁を使うのを手を添えて手伝う父親
写真=iStock.com/Yagi-Studio
※写真はイメージです

短期の目線で見てしまうと、「家事育児をやっているか、やってないか」「夫ばっかりが好きなように仕事している、していない」といった、今の話にフォーカスしがちになります。

しかし、長期目線でお互いのキャリアのアクセルの踏みどころを、夫婦で調整し合って、家族を運営していくほうが、健全なキャリア形成が行なえるのです。

実際、わが家も長男が小学校1年生ぐらいまでは、私がアクセルを踏み切れないキャリア形成をしてきました。子育てのために今のポジションから降りたり、転勤を断ったりもしています。結果的には、私はその間にさまざまな複数の副業をして、他に仕事の目処が立ったので、キャリアチェンジしています。今はチェンジした分、チャレンジにアクセルを踏むときが増えたので、その間の子育ては夫に任せています。これからは私がアクセルを踏む順番だと、夫に話しています。