なぜこれほどまで五輪を利用するのか

五輪のたびに、世界の顰蹙ひんしゅくを買うロシアの行動は、五輪を国威発揚に利用する政権体質に起因する。これは専制主義国に共通する現象で、ベラルーシの独裁者、ルカシェンコ大統領も今回、自国選手団のメダルが7個と、過去最多だった北京五輪の半分にとどまったことに「最悪の結果だ」「ハングリー精神が欠けている」と酷評した。

プーチン大統領も金メダル3個にとどまった2010年バンクーバー五輪の後、「良い試合を見せることが重要だという意見は誤りだ。試合は勝つためにある」と述べた。選手へのドーピングは、関係者が大統領に忖度して実行した可能性がある。

世界注視の五輪での活躍は、「強いロシア」を誇示して欧米との対立で心理的優位に立つ狙いに加え、近年は、生活苦や格差への国民の不満をそらす国内的配慮もあるようだ。

択捉島訪問も開催国日本への嫌がらせだった

五輪に合わせた威信行為は、開催国・日本への北方領土問題の嫌がらせにもみられた。ミシュスチン首相は7月26日、択捉島を訪れ、北方領土への投資に対する免税措置など経済活性化策を打ち上げた。

北海道根室市の納沙布岬。眼前には北方領土の歯舞群島が広がっている。
撮影=プレジデントオンライン編集部
北海道根室市の納沙布岬。眼前には北方領土の歯舞群島が広がっている

同首相は「西側の投資家にとって興味深く、日本も共に働ける」と述べたが、日本側はロシア法を前提とした政策に反発した。ロシアの首相は2、3年に一度北方領土を視察しているが、このタイミングでの訪問は、東京五輪最中にロシアの実効支配を世界に誇示する狙いがうかがえる。

4月には、五輪出場を目指すサーフィンのロシア・チームが国後島で合宿を行っている。ロシア軍は2月と6月、北方領土周辺で軍事演習を行ったが、6月の演習は1万人が参加し、爆撃訓練を含む大規模なものだった。一連の挑発行動には、対日関係への改善意欲は見られない。

こうして、プーチン政権が煽る愛国主義高揚政策は、東京五輪を通じても突出し、「ロシア異質論」を高める形になった。

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