ヨーロッパの「アンダーヘア・ゼロ」ブーム

話は少し下の方にそれますが、さらに興味深いのは「ノースリーブを着た女性にワキ毛があること」については寛容である一方で、近年のドイツでは男女ともに「アンダーヘアをゼロ」にしている人が多いことです。

欧州では「下がツルツルであること」がいわばマナーというか常識のようになっているといっても過言ではありません。

特にスポーツ好きやサウナ好きの人のあいだでは男女を問わず、「アンダーヘアは処理してツルツルにする」という暗黙の了解があります。そのため、もしドイツのサウナに行く場合、アンダーヘアを処理していないと、一瞬だけ皆の注目を浴びてしまうことになるかもしれません。

以前、サッカーの香川真司選手が欧州のあるクラブに所属していた際、メディアに「欧州の選手に合わせて、自分もアンダーヘアを全部剃っている」と話をして日本でも話題になったことがあります。

アンダーヘアを処理する理由について、一般的には男女ともに「スッキリするから」「便利だから」「衛生的だから」「恋人とおそろいにしたい(恋人もアンダーヘア・ゼロ状態)」などの理由があるようです。

ドイツの女性はスカートよりもパンツを穿きますが、ドイツのパンツは身体の線がハッキリ出るデザインのものが多いです。「ショーツの線が外に響いていないか」を気にする女性が多いためTバックが人気です。そして日常的にTバックを穿くとなると、やはりアンダーヘア・ゼロの状態が便利というわけです。

ただ気が楽なのは、「ワキ毛」や「腕の毛」と違って、アンダーヘアというのは、電車やオフィスにいて、第三者から見えるものではありません。たとえ処理をしていなくても、サウナにでも行かない限り、日常生活で知らない人からの視線を気にする必要はありません。

同性からも厳しい視線が注がれる日本

それにしても、日本は「女性の毛」に対する視線がとにかく厳しいのです。

レストランで食事するオフショルダーの服を着た女性たち
写真=iStock.com/RyanKing999
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以前テレビを見ていたら、とある民放局の情報バラエティー番組が、旧東ドイツの歴史のことを取り上げていました。日本の著名人や芸能人がベルリンなど現地を訪れ、かつて東側で生活していた人の話を聞く様子が紹介されていました。

そのなかでおやっと思ったのは、日本の女性芸能人が「昔の東ドイツの女性スポーツ選手は男性っぽくて、とても女性とは思えなかった」といった趣旨の発言をしていたことです。

日本人にとって昔のオリンピックで旧東ドイツの女性スポーツ選手がワキ毛を生やしたまま出場していた時のインパクトが強かったのだと想像します。

昔も今も日本には「女性は、頭髪をのぞく『人の目に触れる体の部分』の毛は全てなくすべきである」という不文律が存在するわけです。でも美容を扱う番組でもないのに、女性の身体の「そういったこと」(つまり脱毛しているか・しないか)ばかりを気にしてしまうのは視野が狭い気もします。