「米国人1人≒日本人1.7人」という労働生産性の現状

「仕事をしない会社員」や「期待したほどの成果を上げられない会社員」の解消は長年の経営課題であったが、先述したようにデジタル改革が進み始めて早期・希望退職の動きが本格化してきた。

テレワークの普及がこうした動きを後押しするならば歓迎すべきだ。人口減少社会を克服するには、雇用の流動化は避けられないからである。

働き手世代は激減期に入っており、コロナ不況を脱すれば再び日本は深刻な人手不足に襲われる。働く意欲のある人がすべて働かなければ社会が回らなくなる。現在の日本にとって、働く能力がある人々を“妖精さん”や“社内失業者”などのように無駄遣いしている余裕はないのである。彼らにとっても、新たな道が開けたほうがよいだろう。

テレワークによって「仕事をしない会社員」が働く存在に転じることは、個々の底上げが実現する以上に大きな利益を各企業にもたらす。1人当たりの労働生産性(就業者1人当たり付加価値)が向上するからだ。

そもそも、“妖精さん”や“社内失業者”がいなくても仕事に支障はないのである。稼ぐ側に回れば、その分だけ単純に利益が大きくなり、1人当たりの労働生産性は向上する。

反対に退社したら、会社全体の労働生産性の分母が小さくなるということなので、計算上、1人当たりの労働生産性は大きくなる。もっと直接的な言い方をするならば、給与を受け取る人数が少なくなるぶん、平均賃金が上昇する。

日本の労働生産性の低さはかねて指摘されてきた。日本生産性本部によれば、2019年の1人当たりの労働生産性は8万1183ドル(824万円)でOECD加盟37カ国中26位である。これは米国の13万6051ドル(1381万円)の6割程度に過ぎず、同じ金額を稼ぐのに米国が1人で済むところを、日本は1.7人ほど必要とするということだ。

“妖精さん”や“社内失業者”を「働く人材」へ進化させる

人口減少に伴い新規人材の採用が難しくなり、マーケットが縮小していくことが避けられない以上、日本企業が生き残るためには、1人当たりの労働生産性を向上させて、米国をはじめとする諸外国との差を縮めていくしかない。

そうした意味では、個々の能力の底上げを図り、「仕事をしない会社員」を働く人へと変えるきっかけとなるテレワークは、人口減少対策としても大きな期待がかかる。

感染防止策といったレベルに終わってしまうのか、生産性向上の大きな果実を得られるところまで発展させられるのか。各企業の取り組み次第で、日本の未来は大きく違ってくる。

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