放映権料は右肩上がりなのに、開会式の視聴者数は33年ぶり最低

こうした評価はやはり「同情」だろう。

エリザベス英女王が人気スパイ「007」のジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)のエスコートでヘリコプターから落下傘で飛び降りる演出があったロンドン五輪の開会式に比べると、喪に服した格好の東京五輪の開会式はサプライズに欠けた。

日本人にとって開会式最大の見せ場は東京五輪大会名誉総裁の天皇陛下が開会宣言で「私は、ここに、第32回近代オリンピアードを記念する、東京大会の開会を宣言します」と「祝い」の言葉を「記念する」に変更したことだった。

ニールセンや米NBCユニーバーサルによると、アメリカで東京五輪開会式を視聴した人は過去33年間で最低の1670万人にとどまった。ロンドン五輪より59%減、前回のリオ・デジャネイロ五輪より37%も減少した。しかし、下の図表をご覧いただくと分かるように五輪全体の放送権料は右肩上がりに増え続けている。

夏季五輪開会式の米視聴者数
出所=ニールセン、statista

テレビ視聴者が減ったとは言っても、ネットやスマホの普及により、NBCが設けたプラットフォーム経由のストリーミング視聴者は1700万人にのぼり、リオ五輪より72%増、18年の平昌冬季五輪より76%も増えた。

イギリスにおける視聴者数もロンドン五輪の開会式では2690万人を記録し、世界中が注目した前年のウィリアム王子とキャサリン妃のロイヤルウェディングを上回った。当時、IOCの担当者は「ロンドン五輪は真に五輪放送の新しい時代を告げるものだ」と胸を張った。

しかし、深夜に放送が始まったリオ五輪開会式の視聴者は380万人まで減り、東京五輪の開会式はそれを下回る230万人にとどまった。