ワクチン接種率の高まりで、株価を注視すべき業種は何か

日本政府は、新型コロナウイルス対策で2020年4月に最初の緊急事態宣言を発して国民に活動自粛を呼びかけるとともに、国民に給付金を出すことにしました。ところが、国民がオンラインで給付金を受け取るための申請手続きを行うと、役所の窓口よりもかえって時間と手間がかかってしまうという状況が全国の地方自治体で続出してしまったのです。

そうとなって、新型コロナウイルスは我が国の行政のIT化の大幅な遅れも露呈させたのでした。国民から批判を浴びた菅政権は行政のIT化を促進するためにデジタル庁の創設に踏み切りました。

デジタル庁は2021年9月からスタートし非常勤職員を含めて500人規模の組織となります。トップは首相ですから、それは菅政権が行政のIT化に全力を挙げている表れだともいえるでしょう。

IT化に関連すると、新型コロナウイルスのワクチン接種についても、当初はマイナンバーで接種の順番や回数を管理することになっていました。これも各地方自治体から、システムが未整備でとてもマイナンバーを使える状況ではないという猛反発を受けて、マイナンバーでの管理も頓挫してしまったのです。マイナンバーで管理できないのはそれだけ接種の効率が落ちることを意味します。

行政のIT化の遅れは行政手続きの効率化の足を引っ張っているわけですが、民間ではコロナ禍によってネットの活用が一段と促進されることになりました。すなわち、国民生活ではいわゆる巣ごもり需要が起こってネット通販、ネットゲーム、動画配信サービスなどが盛況になり、ビジネスではテレワークやウェブ会議が急増して業務の効率化・合理化を促進したのです。

これはコロナ禍がさまざまな社会変化をもたらしているととらえられます。なかでもテレワークとEC(電子商取引)の拡大、地方・郊外への移住、オンライン診療の規制緩和などが具体的に指摘できるでしょう。

テレワークも最初は職場や通勤での感染防止を最優先の目的としたものだったのですが、生産性の向上につながることははっきりとわかってきて、テレワーク拡大の流れはこれからも続いていくはずです。それで、テレワークも利用可能なクラウド型の業務支援ソフトウエアやコミュニケーションツールを提供する新興企業がどんどん台頭してきました。

なおクラウドとは、ユーザーが自分のパソコン等に業務用ソフトをインストールしなくても、必要なときにネットを通じて業務用ソフトを利用できるシステムのことです。

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EC(電子商取引)はネット通販のことですが、ネット通販が消費者寄りとすれば、ECは企業寄りの言葉といえます。つまり、好調なネット通販によってECでのネット・ショップの開設が相次いでいるわけです。

地方や郊外への移住については、テレワークやウェブ会議によって遠隔地でも勤務できることがあと押しとなっています。つまり、通勤が不要なら、生活環境の良い地方や郊外に移住してもかまわないのではないか、という雰囲気が出てきました。

テレワークを導入した企業でも週1~2回程度の出社は必要なのですが、毎日の出勤ではないため通勤時間がもっと長くなっても十分に対応できるということです。この考え方は、勤める側だけではなく会社側も共有するようになってきています。

おそらく、これから現役の会社員でも地方移住に踏み切るケースは増えてくるでしょう。となると、首都圏であればまずは都心から電車で2時間くらい離れた場所へも住み替えのニーズは高まっていくはずです。地方・郊外なら生活にもゆとりが出ます。