ワクチンの接種状況の違いが景気回復にモロに影響

図表2は、ワクチンの接種率の状況です。英オックスフォード大学の研究者らが集計する「アワー・ワールド・イン・データ」による5月5日現在の数字です。

ワクチンの接種率の状況

この図表から明らかなように、日本の接種率は米国や英国に比べて大きく後れをとっています。英国では51.5%、米国でも44.4%の人が少なくとも1回以上のワクチンの接種を受けているのに対し、日本ではわずか2.2%といった状態です。

さらには、これはあまり褒められた数字ではありませんが、米国では、人口の約10%弱の約3200万人強が、英国では7%弱の440万人ほどがコロナにすでに感染しており、それらの人たちも免疫を持っていると考えられます。

一方、日本では、感染者が増加していますが、それでも累計感染者数は65万人程度で、人口の0.5%程度といった状況です。米国、英国では60%近くの人が何らかの免疫を持っていると考えられます。集団免疫ができるのは人口の70%程度と言われていますが、それに近い数字です。

免疫を持った人が増えると、外出の制限も緩和され、事実、米国や英国では、経済活動、とくにイベントや外食などが通常に戻りつつあり、そうした映像がテレビなどで放映されているのを目にする機会も少なくありません。

米国や英国では、このところ個人消費の回復が顕著です。これには、バイデン政権が1人当たり最大で1400ドルの現金給付をしたことも追い風となっています。ワクチンにより外出機会が増えるとともに、使えるお金も増えているということです。

米国ではGDP(国内総生産)の約7割を個人消費が支えています。個人消費が堅調になれば景気に勢いが増します。一方の日本ではGDPの6割弱を個人消費が支えますが、緊急事態宣言などの影響もあり、なかなか本調子にはなっていません。

1日100万人目標…全然加速しない日本の接種状況

一方、日本では、菅首相が1日100万人の接種をめざすと発表しています。日本の人口は1億2540万人程度と推計されていますが、打たない人も含めて、おおよそあと1億人分を打つ必要があります。

現状は1日100万人の接種には程遠い状況ですが、仮にこの1日100万人の接種体制が整ったとしても、1億人に1回打つのに100日、つまりこれから先3カ月以上かかります。医療関係者(480万人)への接種もまだ十分でなく、7月末までにようやく高齢者(3600万人)向けの接種が完了するかどうかと言われている現状、集団免疫ができる程度の多くの人に接種がいきわたるのはいつのこととなるか、とても心配なのは私だけではないでしょう。

そして、高い免疫が得られるひとり2回接種となると、楽観的に1日100万回の接種が可能となったとしても、7カ月近く、つまり、来年にならなければ接種が完了しないということです。そして、1日100万回ペースでの接種は、現状ではとてもハードルが高いように思われ、すべての進行状況は後ろ倒しになる公算が大きい。

米国では、予約なしに薬局などでの接種が可能となっているとのことですが、日本でもワクチンの確保とともに、思い切った接種計画を立てない限り、接種率の向上と、それに大きく関係する経済の回復は望めないのではないかととても心配になります。